ありがちな失敗例~後悔先に立たず~
新しい技術、新しい開発方法論が生み出されている昨今も、先述のとおり失敗は減っていない状況が続いています。システム開発における失敗例は数多くあり、近年では前回の開発から長期間が経過しているシステムの更改プロジェクトや新技術を採用したプロジェクト等の失敗も散見されますが、ここでは、それ以外でよく耳にする失敗事例を2点挙げます。
1.「これでいけるだろう…」思い込みで突っ走ってしまい失敗した事例
『開発プロセス(※2)の整備が不足したままシステム開発が進行し、成果物・納品物が抜け落ちてしまった。』
もう少し詳細に見ていくと、
- お客さまだけでなく、プロジェクト内部のメンバー同士においても、『どのフェーズで何を作るのか』『何をしなければならないのか』『最終的に何をお客さまへ納品するのか』の考慮が不足し、認識相違が発生しているケース
- 計画時に考慮していなかった成果物が途中で必要だと判明したため、追加のコスト調整や、作業の手戻りが発生したことにより工期が遅れたケース
- プロジェクトで採用する技術(特にプロジェクトメンバーにとって新しい技術)に対して、技術を過信するあまり、PoCやメンバー育成が必要かどうか等の検討プロセスを経ずに失敗するケース
等が挙げられます。
似たようなプロジェクトを経験していると、どのようなプロセスでプロジェクトを進めればよいか、ある程度わかっているものです。
しかし、世の中に同じプロジェクトは一つとしてありません。
似ていると思えるプロジェクトでも、過去のプロジェクトと同じでよいのか、新たな考慮が必要なのでは、という目線で計画や開発プロセスを考え、関係者と合意する必要があります。
2.期限ありきで突っ走らざるを得ずに失敗した事例
『「どうしてもここまでにシステムが必要だから!」で走らざるを得なくて…』
こちらも詳細に見ていくと、
- ビジネススピードがどんどん上がっている昨今、お客さまから「いついつまでに完成!絶対!」という期限が設定されており、期間が足らないため、計画が曖昧なままプロジェクトをスタートしてしまい、失敗したケース
- アジャイル開発を採用しプロジェクトをスタートしたが、「本当に必要なもの」を決められず、失敗したケース
等が挙げられます。
これらの事例から、新しい技術、新しい開発方法論が生み出されている昨今でも失敗が減っていない原因として、「プロジェクトで実現するシステムやサービスは一品物であり、新しい技術やアジャイル開発等、開発方法論を用いるだけでは対応できない、人が介在(※3)しなければならない部分があるということ」が挙げられます。
時間がなくても、走り出す前に『考えるべきこと』は考え、計画へとまとめていかなければなりません。
システムを開発する際の作業とその成果物、一連の作業の繋がりのこと
- 何を作るのか(≒最終的な成果物(システムやサービス)がどうなっていればよいのか)を決めること
- 中間の成果物には何が必要で、それらを作るには何をすればよいのかを決めること
- その作業を、どのような順序で実行していけばよいのかを決めること
転ばぬ先の杖 としての第三者からの客観的な視点
ありがちな失敗例を挙げましたが、これらの失敗、実は、事前に見積りや計画に不備がないか、第三者にチェックしてもらうことによって対策が可能です。
第三者に見てもらうことのメリットは3つです。
1.「だろう…」の抑止 プロジェクトは一人で成功させられるものではない
プロジェクトは、プロジェクトマネージャーやリーダー層だけではなく、お客さま、エンドユーザー、プロジェクトメンバー、運用メンバー等多数の人間が携わります。
多種多様な経験、価値観をもった人間が携わるからこそ、計画段階で「プロジェクトは何をアウトプットするのか」「それらをどのように進めていくのか」を検討し、関係者間で認識を合わせておく必要があるのです。
計画を立てる人たちが見えている、考えている世界が、関係者に伝わり、実行できる必要があるのです。
それを実現するために、第三者でもわかるように表現されているか、の視点でプロジェクト計画を見ることが大切になってきます。
2.「時間がない…」でも失敗を防ぐ スケジュールのフィジビリティを確認できていることは必須
「時間がないとき」ほど「これでいけるはず」という「思い込み」は強くなり、リスクを過小評価しがちです。
そんな思い込みを排除したり、目を背けたくなってしまう大きな課題から目をそらしたりしないために、第三者の客観的な目線が役立ちます。
プロジェクト内では指摘しづらいリスクや課題、対応策について、第三者の視点で確認することで先の事例に挙げたような失敗を回避・低減できることもあります。
3.技量不足を補う
一般的なプロジェクト管理手法や自社の標準的な開発プロセスをそのまま使えば計画が作れる訳ではなく、プロジェクト特性に応じてリスク対策検討やプロセステーラリングするスキルが必要です。
専門家はよい事例、悪い事例含め多くの事例を知っています。そして、特に悪い事例を予防するアクションも知っていることが多いです。
特性を踏まえて必要な対応を計画に盛り込めているか、プロジェクトメンバーだけでなく専門家に見てもらうことで、考慮すべきことの漏れや、よりよい対応策を計画に盛り込むことができます。
プロジェクトを失敗させないための手立てとして、第三者の目線を入れてみるのはいかがでしょうか?
さいごに
プロジェクトにおいて技術的な問題・プロジェクト管理面の問題、その他の問題が発生し、遅延やコスト増となることは、経営に大きな影響を及ぼしかねません。NTT DATAでは、プロジェクトの失敗を重要なリスクの一つに位置付けており、10年前に社内で第三者チェック組織を設置しました。
これまで600件超のプロジェクトの企画や計画の段階において、提案内容や実現性の確認、プロジェクト計画や見積りの妥当性の確認を行っており、プロジェクトの失敗(当社では不採算案件と呼んでいます)の低減に寄与しております。
図1:『NTTDATA 統合レポート2021』より
一例として、プロジェクトが、プロジェクトの特性を踏まえ、リスクを抽出し、リスクに優先度づけをした上で対策を検討しているか、を第三者の目線で確認しており、プロセスの改善点に対して助言を行うことで、プロジェクトの失敗を予防する支援を行っています。
また、NTT DATAのプロジェクトの支援にとどまらず、お客さまのシステム開発プロジェクトに対して、その計画の妥当性をチェックすることにも取り組み始めており、評価をいただいております。
図2:提供サービス(詳細はお問合せください)
お客さまが組織内に品質保証プロセスを導入・あるいは改善するサポートも行っております。
今後も、お客さまのパートナーとして、システム開発力やITマネジメント力の強化・支援にも取り組んでいきます。
NTTデータ 品質保証部 第三者チェックサービスのご紹介動画:
https://youtu.be/Fg9IiMFzzGo
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