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1.なぜサービスデザインが求められるのか
データやAIの活用によってビジネスが進化し続ける中、「デザイン」や「デザイン思考」が顧客に付加価値を届けるための強力なツールとしてビジネスに浸透しつつあります。デザイン思考をビジネスに取り入れることで、顧客のニーズや欲求に真に響く革新的なソリューションを生み出すだけでなく、柔軟性とイノベーションの文化を組織内にもたらします。そのため、利用者視点であるべき社会の姿を見極め、価値をデザインすることができる高度なデザイン人財育成の重要性が高まっています。
一方で、高度なデザイン人財を育成することは非常に難しいと感じている方も多いと思います。その理由の一つは、デザイナーが持つスキルセットの幅が非常に広いためです。例えば、サービスデザイナーは顧客と共にエンドユーザーのあるべき体験を描き、それを実現する道筋を考え、コンセプトに落とし込み、視覚的なユーザーエクスペリエンス(以下、UX)として表現する必要があります。この一連の流れにおいても、複数のスキルが求められます。必要なスキルセットを網羅した育成プログラムを企画すること自体が難しく、時間もかかります。
NTTデータでは、従来のシステム開発に加えて、お客さまと共に事業を共創するパートナーとして価値提供を行う中で、高度デザイン人財育成の重要性を認識してきました。その取り組みの一環として、本記事では昨年度ミラノで開催したサービスデザイン基礎研修についてご紹介します。
2.NTTデータが作り上げてきたサービスデザイン人財育成プログラム
本研修は、アート&デザイン分野で世界トップクラスのミラノ工科大学とNTT DATA Italy(Tangity Italy)が協力し創り上げた、ミラノ工科大学の教授陣から直にサービスデザインの基礎を学ぶ1週間の短期集中プログラムです。
新規事業・サービス開発や既存の改善活動にユーザー視点を取り入れたい、デザイン思考には興味があるが、仕事でどのように活用すればよいかわからない、そんな方々を対象に、本研修はサービスデザインの基礎を体系的に習得し、欧州のデザイントレンドを理解するとともに、異業種間の交流を通じてデザインの人脈を形成することを目的としています。異業種の参加者が一堂に会し、サービスデザインを学ぶ意義は、さまざまなデザイン思考が融合されることで驚くべきソリューションを生み出す可能性にとどまりません。デザイン組織が企業内の一部門として機能的に位置付けられ、運用されることが求められる今後に向けて、実業務でも他部門と連携しながらデザイナーが能力を発揮する環境を体感していただくことも、この研修の重要な目的です。
3.サービスデザイン人財の育成がもたらすビジネス価値
次に、実際にサービスデザイン人材育成プログラムにご参加いただいた自動車業界のお客さまに対し、研修後にサービスデザインアプローチによる新しいユーザー体験の創出を目指す伴走支援プログラムを提供した事例をご紹介します。このお客さまはハードとソフトを掛け合わせた新しいユーザー体験の創出に課題を感じてていました。そこでこのプログラムを通じ、顧客のニーズに深く根ざしたサービスアイデアの創出を目指して部門横断のメンバーが集まり、顧客体験のあるべき姿やカスタマージャーニーを徹底的に検討しました。
サービスデザインの上流とも言えるユーザー理解からスタートし、現状のサービス(ASIS)を整理し、顧客が感じるペイン(不満や問題点)とゲイン(得られる利益や価値)を抽出する作業を行いました。得られたインサイトを基に、具体的なアイデアを展開し、さらにユーザーヒアリングを通じてこれらのアイデアを検証しました。この一連のプロセスを経て、将来のサービスの方向性を示すTo-Beストーリーマップへと落とし込み、サービスアイデアの具体化とユーザーにとっての価値の明確化につなげました。 サービスデザインの実践には、テーマやプロジェクトの状況に応じた多様なフレームワークやプロセス設計のスキルが必要です。例えば、顧客の行動パターンや感情の流れを理解するためのカスタマージャーニーマップ、サービスの全体像を把握するためのサービスブループリントなど、さまざまなツールを駆使することが求められます。しかし、サービスデザインの全体像を理解せずに個々のツールやプロセスを使用すると、それぞれのツールを効果的につなげることが難しくなります。そのため、サービスデザイン人財育成プログラムでは、まず全体像をしっかりと把握することに重点を置いています。研修後の実プロジェクトでの実践を通じ、参加者はサービスデザインのアプローチやプロセスを実際に適用し、より深い理解とスキルを効率的に身につけることが可能になります。結果として、お客さまの企業内でもサービスデザインの考え方が浸透し、さらなる顧客価値の創出に向けた活動が活発化しています。
サービスデザインは単なる理論ではなく、実際のプロジェクトに適用することで真価を発揮します。サービスデザイン人財育成プログラムと伴走支援プログラムを通じて、お客さまは新しいユーザー体験の創出に向けて一歩踏み出し、今後のビジネスにおいても革新を続けていくための基盤を築くことができました。
4.NTTデータが導く、サービスデザイン変革
ユーザーが享受すべき体験と、それを提供するために必要なサービスはますます多様化しています。これらを組み合わせて社会に価値あるサービスをしっかりと届ける道筋を作ることができる人財、すなわち『サービスデザイナー』の存在が今後ますます求められていくと私たちは考えています。
NTTデータは、デザインとテクノロジーを組み合わせ、そのポテンシャルを最大限に発揮させることで、UXの向上と、その先にあるビジネス価値の最大化につながる体験を顧客企業と共に創り出していきます。また、NTTデータグループだけでなく、社外にも高度なデザイン人財を育成する研修を提供し、「デザインの民主化」を目指してまいります。
We humanize complexityについてはこちら:
https://tangity.global/ja
We Untangle Thingsについてはこちら:
https://note.com/tangity/
ミラノ⼯科⼤学のサービスデザインの基礎研修についてはこちら:
https://academy.intellilink.co.jp/design/traininginmilano
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