はじめに
前回の記事(※)では、VUCA時代におけるビジネス仮説の立案フェーズに焦点を当てて、適当なセグメントに対するユーザ共感から、アイデアの発散・取捨選択までのポイントをお伝えしました。その続編として本記事では、仮説検証をスムーズに行うためのコツについて紹介します。
モバイルアプリ開発における仮説検証のコツ
立案した仮説(製品やサービス)を検証するにはユーザヒアリングやプロトタイプなどいくつかの手法がありますが、モバイルアプリ開発のエンジニアリングの現場ではプロトタイプがよく使われます(表参照)。
サービス創出期における仮説検証をスムーズに行うためには、本開発を見据え、再利用することを前提としたUIデザインやモバイルアプリをプロトタイプすることが重要になります。
本稿では、筆者の経験からデザインプロトタイプとファンクショナルプロトタイプにフォーカスした事例をベースにお話します。
手法名 | コンテクスチュアルプロトタイプ | デザインプロトタイプ | ファンクショナルプロトタイプ |
---|---|---|---|
内容 | エンドユーザがどのように使うのかをストーリーテリングする | UIを主に検証する | 機能がどのような挙動を取るのかを検証する |
成果物 | ユーザストーリー(動画など) | UIデザイン(紙芝居) | モバイルアプリ(機能) |
表:代表的なプロトタイプ手法の種類
UIデザインとモバイルアプリ開発プロセスの融合
何度も微調整されるUIデザインのモジュール改修性や再利用性を高め、仮説検証をスムーズに切り抜けるために有効なフレームワークの1つにAtomic Designと呼ばれる手法があります。Atomic Designとは、画面を粒度の異なるコンポーネントから構成される物質として捉え、粒度の小さなコンポーネント(atoms)から、それらを組み合わせ大きなコンポーネントになるようデザインしていく手法です。 図はサンプルプロジェクトにおける、デザイナーとデベロッパーのアクティビティであり、デザイナーはボタンを作成、アプリ開発者はボタンに対して共通的に利用する仕様を設計、実装していきます。
図:UIデザインとアプリ開発のアクティビティ
デザインする対象とモバイルアプリ開発をする対象(範囲や粒度)を揃えることができるので、UIデザインとモバイルアプリ開発のプロセス融合・成果物統制ができ、デザイン-実装間、仮説検証-本開発間をシームレスにつなげることが、Atomic Designの本質と言えます。
最後に
この記事では、立案した仮説の検証をスムーズに行うためのコツとして、Atomic Designを使った事例を紹介しました。最近、新たにSwift UIやAndroid JetpackのようなUIデザインを宣言的に実装できる開発フレームワークが登場していることもあり、アジリティがさらに求められるようになってきた仮説検証フェーズにおいて、本記事がアジリティ向上の一助になれればと思います。