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2023.5.18事例

新規ビジネス拡大へ!NTTドコモにみるデータドリブン経営
—9,200万人の会員データ活用における課題と新データ基盤—

「データドリブン」「データファースト」といった言葉に象徴されるように、ビジネスにおけるデータの重要性が叫ばれて久しい。しかし、これを実行へと移し、成功へのマイルストーンを歩んでいる企業は、まだそう多くないのが現実だ。そうしたなか、移動体通信事業者として国内最大手のNTTドコモでは、9,200万人を誇る会員データを活用し、顧客とパートナーとをつなぐ新しいエコシステムを形成すべく、クラウドデータプラットフォーム「Snowflake」を軸としたデータ活用基盤の整備を進めている。この取り組みについて、NTTドコモとパートナーを務めたNTTデータ、両社の担当者に話を聞いた。
目次

新しい事業の軸を模索し、9,200万人の会員に着目

日本最大手の移動体通信事業者であり、長きにわたり携帯電話事業者として確固たる地位を築いてきたNTTドコモ。しかし、国内における携帯電話保有率が飽和状態にあることを受け、携帯電話事業におけるこれ以上の成長は見込みづらくなっている。そうしたなか、企業として求められる“成長”を継続すべく、まさにいま、会員事業やスマートライフ事業といった新しい事業領域へとビジネスの幅を広げている最中だ。

このうち会員事業の主軸がdポイント事業であり、2015年のサービス開始以来、9年目を迎えた現在では9,200万人の会員数を擁している。そして、スマートライフ事業としては、主軸の「⾦融・決済」や「映像・エンタメ」の他、「電⼒」「メディカル」「XR」など新しい領域についても拡大を続けている。

まさに転換期を迎えている同社において、サービスを支えるシステムには、大きく二つの課題が生じていた。

一つが、データ分析基盤やマーケティング基盤といった既存システムがオンプレミス環境にあるという課題だ。これまで自前のサーバーを構築してこれらの基盤を運用してきた同社だが、市場変化のスピードがますます加速するなかにあって、オンプレミスに欠かせない需要予測に基づいたシステム計画が困難となっていたのだ。またそれと合わせて運用にかかる負荷も限界を迎えつつあった。そうした課題を解決すべく、現在NTTドコモでは、従前の基盤をクラウドへと切り替えている。

株式会社NTTドコモ 情報システム部 データ基盤担当 担当課長 小林 潤 氏

株式会社NTTドコモ
情報システム部 データ基盤担当 担当課長
小林 潤 氏

同社情報システム部でデータ基盤の担当課長を務める小林 潤 氏は「クラウドであれば、需要予測が立てられなくてもスケールアウトやスケールアップを迅速かつ容易に行えます」と、クラウドへの移行メリットを口にする。

もう一つの課題が、データを活用する人材の育成だ。2021年10月に発表した「新ドコモグループ中期戦略」では、企業運営のデジタル化とデータ活用を加速し、CXの向上と事業構造改革の実現を掲げている。その一環として「データ活用人材育成プログラム」を担当組織のリードのもと、いままさに実施しているところであり、2025年頃までに5,000人のデータ活用人材の育成を目指している。

求めたのは「スケーラビリティ」と「アジリティ」、そして「譲れないセキュリティ」

NTTドコモが直面していた課題に対し、パートナーを務めるNTTデータは、課題の分析からソリューションの提供にいたるまで、このプロジェクトに伴走してきた。NTTデータ テレコム・ユーティリティ事業本部に所属し、今回のプロジェクトにおけるグランドデザイン策定、及び、基盤サービス選定などを行った嶋田 亮介はこう話す。

テレコム・ユーティリティ事業本部 モバイルビジネス事業部 課長 嶋田 亮介

テレコム・ユーティリティ事業本部
モバイルビジネス事業部 課長
嶋田 亮介

「長きにわたりご支援していることもあり、オンプレミス基盤運用、及び、全社視点でのデータ活用を進める上での課題感は、常にNTTドコモと同じものを持っていました。そこで当社としては、システムとして何を求めるべきかのグランドデザインを描くなかで、スケーラビリティとアジリティをどう担保するかが重要だという結論にいたりました」(嶋田)

まずスケーラビリティについてはパブリッククラウドが適しており、運用負荷の軽減を考慮した際、SaaSの活用が最適だと判断した。特にSaaSの選定においては、NTTデータグループのグローバルなネットワークを最大限に活用しながら、ニーズとシーズのバランスが取れ、更に製品品質も保証される最適なサービスを模索していった。

「グローバルな観点から最も秀でた製品やその根底にある考え方をキャッチアップしなければいけない中、そこに精通しているのはとても大事なことです。それができるITベンダーは国内では少ないのではないでしょうか。だからこそ、スケーラビリティとアジリティの双方を実現できたのだと思っています」と、小林氏はNTTデータの“目利き”を評価する。

小林氏と同じNTTドコモ 情報システム部 データ基盤担当 主査の山本 康二 氏も、「サービス選定において、何よりも重視すべきは“会員情報を預かるうえでの強固なセキュリティ”」だとし、パートナーであるNTTデータに対し、次のように信頼を寄せる。

株式会社NTTドコモ 情報システム部 データ基盤担当 主査 山本 康二 氏

株式会社NTTドコモ
情報システム部 データ基盤担当 主査
山本 康二 氏

「NTTデータは、新しいサービスを見つけた我々が少し浮足立って『これがやりたい!』と言っても、グローバルの状況や私たちが第一に考えている“お客様のデータを何が何でも守る”という基本理念をしっかりと理解して、『まだ早いです。すこし冷静になりましょう』などとはっきりと止めてもらえるんです。そうした姿勢からは、プロジェクトを共に歩む信頼できるパートナーなのだと実感できましたね」(山本氏)

“Snowflake+α”の採用でデータ活用を加速

今回、データ活用基盤の検討を開始したのは2019年頃に遡る。アーキテクチャのグランドデザインを描き、製品の洗い出しを進め、2020年秋には本格検証を実施。そして2021年7月にローンチと、スピーディにプロジェクトは進められた。

そのデータ活用基盤として選定されたのが、当時はまだ国内での導入事例が存在しなかったクラウドデータプラットフォームの「Snowflake」であった。選定理由について、NTTデータ テレコム・ユーティリティ事業本部 本村 昭太郎は次のように説明する。

テレコム・ユーティリティ事業本部 モバイルビジネス事業部 課長 本村 昭太郎

テレコム・ユーティリティ事業本部
モバイルビジネス事業部 課長
本村 昭太郎

「グランドデザインを考えるなかで、“As Is”の整理と“To Be”を描いたところ、既存のオンプレミス環境には大きく3つの課題があることがわかりました。それは、“リソースの限界”と“データのサイロ化”、“システム間の連携性の欠如”です。そうした課題を踏まえてNTTデータとして導きだしたアプローチが、製品ありきではなく、NTTドコモのビジネスを加速させるには『何が最適なのか』、課題ベースで考えていくというものでした。そのために、当社シリコンバレーオフィスをはじめとした海外拠点の知見も借り、適したソリューションを模索していきました」(本村)

その結果、白羽の矢が立ったのが「Snowflake」であった。本村はつづける。

「Snowflakeが持つ無限とも言えるスケーラビリティはNTTドコモが抱えている課題の解決はもちろん、その先に待ち構えているであろうビジネスを阻害する要因をもクリアできると確信しました」(本村)

NTTデータからSnowflakeの提案を受けたときのことを山本氏は「私も最初にSnowflakeの話を聞いたとき、コンセプトが素晴らしく、すごく良いクラウドデータプラットフォームだという印象を抱きました」と振り返る。

ただし、理想とするスケーラビリティやアジリティが得られても、NTTドコモのデータを扱う上で最も重要となるセキュリティ面や膨大なデータ量を取り扱う性能面といった非機能的な要素、加えて海外を中心としたサポート体制と言った運用面での不安を完全に払拭する必要があった。そこでNTTデータは、Snowflake社と業務提携を結び、ベンダー任せにしない一枚岩の運用体制を構築。これらの非機能や運用における課題を一つひとつ解決していった。

テレコム・ユーティリティ事業本部 モバイルビジネス事業部 主任 佐川 未紗

テレコム・ユーティリティ事業本部
モバイルビジネス事業部 主任
佐川 未紗

さらに、基盤の整備と等しく重要なデータ運用やデータマネジメントにもNTTデータは注力している。ローンチ時点には旧環境から約600のデータを揃え、現在は5,000以上のデータの品質向上に取り組むNTTデータ テレコム・ユーティリティ事業本部 佐川 未紗は、データの整備について振り返る。

「ローンチ時点に主要データが揃っていたことは、その後の活用を拡大できた要因の一つと言えます。分析時の主軸となるマスタデータを用意し、連携システムごとにバラバラだった項目名を整えることに注力してきました。多種多様で膨大なデータをビジネス活用に紐づくような使いやすい形にしていくことは非常にチャレンジングですが、NTTドコモ様とともにデータを理解し、品質向上していくことに尽力しています」(佐川)

これからも新たな課題に対し、ともに寄り添いながら解決へと導いていく

今後NTTドコモでは、データ基盤の活用を進めていくなかで、会員へのさらなるサービス品質の向上を目指していく構えだ。

「NTTデータの支援のおかげもあって、最初に描いたグランドデザインに対し、一本の太い幹を構築することができたと感じています。そして、サービス品質の向上にはデータ活用はすごく重要であり、そのためにも使いたいときに使いたいデータを迅速にわかりやすいかたちで提供することは欠かせません。そこは今後も徹底的にこだわりながら、ビジネスのスピードや変革についていける環境を提供しつづけたいですね」と小林氏は意気込みを示す。

同氏はまた、NTTデータに期待することについても次のように語る。「引きつづき最先端の技術をキャッチアップしていただくことはもちろんですが、NTTドコモが抱える事業課題や経営課題を理解いただき、寄り添いながら課題に取り組んでくれるパートナーだということを、今回のプロジェクトで実感できました。今後もぜひ一緒に頑張っていけたらと願っています」

山本氏もまた、「ローンチから約1年半が経ち少しずつ課題も見えてきました。作って終わりというのはありませんので、まだまだ新しい課題も出てくることでしょう。NTTドコモはあなたと世界を変えていくというビジョンを掲げています。NTTデータの豊富な経験やノウハウを踏まえながら、アドバイスをいただきつつ一緒に新しい世界の扉を開いてもらいたいです」とNTTデータへの強い期待感を改めて強調した。

対して、NTTデータの本村は、引きつづき強固なパートナーシップを築いていくとし、次のように抱負を示した。

「ビジネスに貢献してこそ、データサイエンスだと思っています。すなわち、結果として“どれだけ利益に結びついているのか”をしっかり示せることが重要です。今はまだ、その段階にはいたっていません。NTTドコモと共に達成したいゴールを描き、我々はビジネスを加速させるパートナーとして密接に寄り添いながら、ともにそのゴールを目指していきたいですね。企業がそれぞれに目指す世界の実現をデータサイエンスによって支援していくことこそ、私たちの使命だと考えています」(本村)

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