「Life Time Value(顧客生涯価値)」の略称であり、ある顧客が自社の利用を開始してから終了するまでの期間に、自社がその顧客からどれだけの利益を得ることができるのかを表す指標。
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「人が想像できることは、必ず人が実現できる(ジュール・ヴェルヌ)」
現在、私たちは「Society 5.0」が描くような未来社会を容易に「想像」できる時代を生きています。コロナによるパンデミックを経てリモートワーク化が進み、職場と家庭の空間的制約が薄れ、人手不足の飲食店では接客ロボットの導入が進み、教育現場では生成AIが積極的に活用されようとしています。これらは社会の変革を象徴していると言えるのではないでしょうか。
図1:Society 5.0 ※内閣府が「第5期科学技術基本計画」において提唱した未来社会のビジョン
SFの父と言われるフランスの小説家ジュール・ヴェルヌは、約100年前に「人が想像できることは、必ず人が実現できる」という言葉を残しました。この言葉は必ずしも真実とは言えないものの、人類は彼の言葉通りかつて不可能と思われてきたことを可能とし、生活を次々と豊かにしてきました。
デザイナーから学ぶデザイン思考法
多くのデザイナーは、想像力が豊かで、グラフィックのみならずさまざまな分野で未来を切り拓く一助となる活躍をしています。ビジネスパーソンがこういったデザイナーの想像力や発想力を学ぶことで、Society 5.0の描く未来社会の実現により一層寄与できるでしょう。そこで2023年6月29日、NTTデータでは社内向けにデザイナーの発想法の理解、浸透をはかるイベント「クリカフェ」を開催。蓮見先生を招待し、「ニューノーマルの時代を構想する(Society 5.0)」をテーマに創発型ワークショップを行いました。ワークショップを通して蓮見先生から学んだデザインの視点とその思考法、実践のためのコツをご紹介します。
図2:社内イベント「クリエティビティを刺激する発想カフェ」の様子(1)
コツその1「デザインとは」~大事にしたい人間中心のデザイン~
図3:デザインとは
デザインの語源はラテン語の「Designare」と言われているのですが、フランスではデッサンと呼ばれており、「DESSEIN」と「DESSIN」の2つに分かれます。前者は「心(意図)」を表し、後者は「形(表現)」を意味します。そこからデザインの意味を考えてみると、デザインとは「心」を「形」にすること、つまり、思いやる気持ち、そういった「心」を表現していくことです。それは我々人間ならば当たり前のようにしてきた行動の一つでもあります。たとえば、蓮見先生が関わった新幹線N700Sのデザインでは、利用者の心に寄り添う工夫が凝らされています。特に注目すべきは天井のデザインです。白い曲面の天井と間接照明の組み合わせにより、客席全体に暖かみのある光が広がり、目が疲れにくく、くつろげる空間が実現されています。さらに、停車駅に近づくと照明が明るく調整され、駅の接近を示唆する仕掛けも施されています。このように利用する人の立場に立って考え抜いて設計されている事が人間中心のデザインであり、Society 5.0の未来において忘れてはいけない重要な考え方なのです。
コツその2「デザイン思考」~正解のない課題への取り組み方~
図4:デザイン思考
最近では、「デザイン思考」がビジネスの中でも注目されています。蓮見先生は特に、「感性思考」に注目したデザイン思考の実践を提案しています。このアプローチは、人間中心のデザインに関わる際にも重要な要素です。私たちの多くは、幼稚園から大学入学共通テストまで「正解がある課題」を解くように教育されています。そのため、合理的で客観的な考え方になり、計測された数字やデータによる定量的な情報に基づいて思考することに慣れているでしょう。しかしVUCAの時代にはこれに加えて、コンテキスト(文脈・背景)を理解し、主観的で非合理的なアプローチを組み合わせる事で、ユニークな仮説・新しいアイディアを生み出すことが期待できます。このような思考が「感性思考」です。蓮見先生は「感性による思考」を身に着けるコツとして、子どものように喜べるか?楽しめるか?という視点を大切にするよう提言しています。赤ん坊が教わらずとも母乳の吸い方を身につけるように、この能力は人間に元々備わっているものであり、その感覚を取り戻すことが重要だと述べています。
コツその3「コントラスティブ発想法」
図5:コントラスティブ発想法
「コントラスティブ発想法」とは、蓮見先生が実践してきたデザイン思考の1つです。たとえばイノベーションを生み出したい場合、「イノベーションは常識の逆である」と考え、まず「常識」をみつけその正反対の非常識を形にすればイノベーションは生まれるというものです。たとえば、車に人が乗ることは常識ですが、その正反対として人にタイヤが付いていることを発想してみます。「感性思考」で考えてみると、「人にタイヤがついている」とは主観による仮説から生まれた今まで考えつかなかった「想像」の一つです。そこから小さなインホイールモーター(自動車のホイールの内側で駆動するモーターのこと)を装備した靴と、バッテリーを内蔵したベルトをつければ、「ウェアラブルなのりもの」というイノベーション・アイディアになるかもしれません。こうした発想法を活用しトライアンドエラーを繰り返すことが、まだ見ぬ未来や優れたデザインを育む土壌となります。
図6:蓮見先生のレクチャーをグラフィックレコーディング(※2)したもの(作成者 岡田利美)
会議やプレゼンテーションの内容などを、文字やイラスト化したもの
創発型ワークショップ「無人島(超限界集落)をスマートシティに変えよう」
蓮見先生からのレクチャーの後、参加者が自ら学びを深める「創発型ワークショップ」を実施しました。全体テーマは「無人島(超限界集落)をスマートシティに変えよう」。参加者を4つのテーブルに分け、Society 5.0から「交通」「介護・医療」「食品」「防災」の4つのテーマを抽出し、各テーブルに割り振ってワールドカフェ方式でアイディアを話し合いました。各テーブルにはホスト役が配され、話し合ったアイディアを文字と絵で模造紙に表現していきます。2時間程かけてスマートシティ化した無人島を「想像」することができました。コンセプトがしっかりしたアイディアが多く、蓮見先生からは「創造性、実現性の高いアイディアが多く素晴らしい」というコメントをいただきました。参加者からは、「仕事の課題解決や顧客への価値創出のためのソリューションを考える際にも活用できる思考力を学ぶことができた」と高評価でした。
図7:社内イベント「クリエティビティを刺激する発想カフェ」の様子(2)
「制約」と「共創」から「想像」と「創造」が生まれる
参加者の皆さんは、笑顔で楽しみながら発想力を発揮していました。創発型ワークショップを通して学んだことをまとめると、未来志向の「想像」と「創造」、「制約」と「共創」から生まれやすいということです。一見、自由な状態が想像力を刺激するように思われますが、実際には無限の選択肢が逆に混乱を招くこともあります。今回の創発型ワークショップでは、「無人島をスマートシティ化する」という制約を設けることで、アイディアの可能性を具体的に探求し、深く掘り下げることができました。それに加えて、「コントラスティブ発想法」というデザイナーの思考法を導入することで、「正解のない課題」に想像力を発揮し取り組むことができました。このような経験を日常の仕事に生かすことで、人間中心のデザインの実装やソリューション提案がより容易になるでしょう。
バックキャスティング視点で事業を育てるには
イノベーションは、フォアキャスティング(未来を予測する)ではなく、バックキャスティング(未来を想像し創造する)から生まれるとよく言われます。
図8:バックキャスティング
未来志向の視点を持つためには、「想像」し「創造」することを楽しむ姿勢が大切です。自ら子どもになったつもりで、未来を豊かに「想像」し、「創造」する。そのための一つの手法として「コントラスティブ発想法」などのデザイン思考を取り入れることで、論理的な枠組みを超えた「革新的」なアイディアを創造することができます。NTTデータのデザイナー集団Tangityでは、お客様とともに未来を「想像」し、それを現実にしていく「創造」のアプローチをサービスデザインやカスタマーエクスペリエンスを通して提供しています。未来を見据えた生活者起点の事業展開やサービスをお考えの際は、お気軽にお問合せください。
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