1.メタバースの現状
「メタバースは『幻滅期』に入った」と言われはじめて早数カ月が経ちました。2023年8月に公開されたGartner®の「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」においてもメタバースは幻滅期に位置づけされています(※1)。
しかしながら、「それでもメタバースがやってくる三つの理由」でも述べられている通り、デバイスの進化は着実に進んでおり、新たなコンピューティングの主役となる未来は近づいてきているでしょう。さらに、キラーユースケースも登場しつつあります。ただし、より没入感のある体験を実現するためのデバイスはまだまだ高価であることから、コンシューマー向けではなくビジネスユースでのメタバースの活用が、まずは進むでしょう。
そこでNTT DATAでは企業のビジネス変革(DXも含む)の起爆剤として、メタバースのビジネス活用の可能性を探っています。
本稿では、メタバースのビジネス活用における効果と、そこから考えられるユースケースの例について解説します。
Gartner®、プレスリリース、Gartner、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」を発表、 https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20230817
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2.ビジネス変革をもたらすメタバースの効果
メタバースがビジネスにもたらす効果についての市場調査(※2)結果より、ビジネスに対するメタバースに期待する効果は以下の2つに大別できます。
(1)制約からの解放
実空間では実現できない事象や物質の再現、さらにはそれらを用いたシミュレーションなど、今までには無い発想によりビジネスを別のステージへといざなう可能性を秘めている。
(2)新たな体験の実現
『制約からの解放』の延長線とも考えられるが、実空間では体験できない新たな体験の創造や実空間では把握しにくい行動の把握、より没入感の高い疑似体験など、メタバースならではの体験を創造することで、利用者に対する新たな価値を提供できるようになる。
これらの効果を意識しながら、お客さまのビジネスにメタバースを掛け合わせることで、お客さまのビジネス変革を実現できるでしょう。
日経BP社『メタバース事業・構築戦略[調査編]第4章 企業と個人に聞くメタバース意向調査』
3.メタバースのビジネス活用例
NTT DATAは、上述のようなメタバースの効果を踏まえ、メタバースを活用したビジネス変革について、3つの変革の分類ごとにユースケースを検討しています。
表1:変革の分類ごとのメタバースのユースケース例
変革の分類 | 効果 | ユースケースの例 |
---|---|---|
エンプロイーエクスペリエンス(EX)の変革 | 制約の解放 +新たな体験の実現 |
バーチャルワークプレイス、バーチャルトレーニング |
カスタマーエクスペリエンス(CX)の変革 | 制約の解放 +新たな体験の実現 |
バーチャル観光、バーチャルコマース、バーチャルイベント、バーチャルヘルスケア |
バリューチェーン(VC)の変革 | 制約の解放 | スマートファクトリー、スマートシティー、マーケティング高度化、シミュレーション |
上記のユースケースの例から具体的な活用例を2つ紹介します。
例(1)メタバースを活用した安全体感トレーニング(EX変革:バーチャルトレーニング)
現場における危険作業や事故再現、トラブル対応などのトレーニングコンテンツをメタバース空間上で実現することで、物理空間上の制約を突破したトレーニングを実現します。
表2:安全体感トレーニングにおけるメタバースならではの価値
価値 | 例 | 期待される効果 |
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自由な空間設計 |
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現実ではできないユニークな体験の提供 |
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現実ではできない高度な振り返り |
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例(2)メタバースを活用した新商品発表会(CX変革:バーチャルイベント)
新商品を発表する際にメタバースを活用することで、マーケティングの観点で大きく価値を創出できると考えています。
表3:新商品発表会におけるメタバースならではの価値
価値 | 例 | 期待される効果 |
---|---|---|
距離や時間の超越 |
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現実ではできないユニークな体験の提供 |
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現実では取得できないユーザー情報の取得 |
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さらに近年、触覚フィードバックのあるVRグローブなど周辺技術の開発も加速しています。トレーニングの用途では、反発やさわり心地などの再現により、より高度なトレーニングへつなげることができます。新商品発表会の用途では、製品のさわり心地や形を感じることも可能になり、より製品の解像度が上がることになるでしょう。
メタバースで扱う視覚や聴覚に加えて、それ以外の五感へもアプローチすることで、さらに一歩進んだ新たな体験を実現することができるようになると確信しています。
4.まとめ
本稿では、メタバースによるビジネス変革の可能性について考察しました。NTT DATAは、お客さまのビジネス変革に向けて、上記で紹介した以外にもEX、CXおよびVCの観点でさまざまなビジネスユースケースを検討し、実現に向けたコンサルティングや要素技術の整備などを実施しています。具体的には、「メタバースが持つ潜在的価値を伝えるための勉強会コンテンツ」、「アイデア創出のためのワークショップ」、「アイデアの価値探索をするためのKPIガイドラインと取得すべきログの定義」、「PoCを高速に進める技術アセットの整備」です。
また、本稿では2つの活用例についてそれぞれ「メタバースならではの価値」を紹介しました。この「価値」を検証するために必要なログをどう取得するか、は今後必ず課題になってくると考えています。現在、さまざまなメタバースプラットフォームが出てきていますが、価値検証に必要なログが取得できるかが「プラットフォームを利用する」のか「独自の空間を作るのか」の判断基準の一つになるからです。
NTT DATAは、メタバースを使い、エンドユーザーも含むお客さまの新たな体験を、お客さまとともに創造していきます。
NTT DATAのDXコンサルタント、デジタルテクノロジーディレクターの詳細はこちら:
https://ndigi.tech/digital_technology_director
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