NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。
【記事執筆者】
西村 祐哉
株式会社NTTデータ コンサルティング&ソリューション事業本部 コンサルティング事業部 テクノロジー&トランスフォーメーション担当 課長
NTTデータ入社後、ベンチャー、スタートアップ起業、コンサルファーム、電機メーカーを経てNTTデータに帰還。グローバルで実績拡大中のイノベーション創出メソッド"FORTH" のマスターファシリテーターであり、イノベーション創出・新規事業開発加速支援と、人財と組織づくりのノウハウを持つビジネスデザイナー。その一方で海外シンクタンクでのスマートシティ研究者としての経験も持つ。現在は、"ひとのいとなみ" に着目した都市と都市空間のDXと顧客共創型のイノベーション創出に従事。ビジネスデザインスプリント開発チームの一員でもある。
スマートシティの現状と共創型での取り組みの重要性
みなさん、スマートシティと聞いてどのようなイメージが浮かびますか?
残念ながらクルマは空を飛びませんし、地面を走るクルマの自動運転もまだ限定的です。しかし、内閣府が提唱するあたらしい社会のありかたとしてSociety5.0(注1)があります。
注1)Society 5.0 - 科学技術政策 – 内閣府「https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/」
狩猟・農耕・工業、そして情報といった社会変化を経て、Society5.0がもたらすものは『つながり』です。NTTデータも、そんな新しい社会の実現に向け、さまざまなサービス/ソリューションを提供しています。
しかし、スマートシティの実現にはまだいろいろな課題があるのも事実です。たとえば、行政起点の住民サービスの色合いがまだ強いため、新たな価値を次々に創出するための仕組みをどう実現するかは重要な課題です。また、スマートシティ化をめざす都市やエリアにはそれぞれの歴史やありたい姿、ビジョンや住民・来訪者の属性といったさまざまな個性があり、それぞれのありたい姿の実現とそのブランディングをどうするのか、も重要な課題です。
こうした課題の解決には、多様で幅広い手段を組み合わせていくことが大切です。そのためには、一社単独で取り組むよりも共創型での取り組みが好ましい場合も増えてきています。
あらたなモビリティサービス“アイモビ” のコンセプトとその提供価値
スマートシティの実現に向けた共創型の取り組みの実例として、日産自動車・Swap・NTTデータが企画・検討し、横浜市で実証実験に取り組もうとしているコンセプト”アイモビ” についてご紹介します。
アイモビをひとことで言えば、『”ひと”と”ひと”とのゆるやかなつながりを形成するモビリティサービス』です。
デジマイズムの読者のみなさんも、普段の仕事で社内外の人脈づくりや新しいアイデアの元ネタ収集を行う機会は多いのではと思います。そして多くの場合、急に仕事に必要になって急いで調べたり、とりあえずウェビナーに参加したり、限られた時間でなかなか納得いかないこともあると思います。こんな時、もっと日常的に情報収集や人脈形成をしておけば良かった、と感じることも多いのではないでしょうか。
とは言え、なかなかそこまでの時間がない、そもそもそこまでの必要性がない、どうすればいいか分からない、などと感じることもありますよね。あるいは、ビジネスマッチング系イベントのガツガツした雰囲気があまり得意ではない、なんてこともあると思います。そのようなモヤモヤと、新たな人脈や情報、コラボレーション相手の可能性を日常の”移動” においてちょうどよい感じのゆるやかさでつなぎ、利用者の”イノベーションのひきだし” を増やすことのできるサービスを目指しています。
具体的には、サービス利用時に登録したON(仕事)/OFF(プライベート)さまざまな属性情報と都度の行先情報を組み合わせ、アイモビサービスが提供されている車両に相乗りする乗客同士の共通項や関心事に関する会話のきっかけや会話そのものを、AIファシリテーターが創出・促進します。
サービスを利用する人にとって、移動の最中に生まれる楽しい会話、有意義な情報、役立つかもしれない人脈の形成、などを気軽に得ることができます。また、都市にとっては、このようなゆるやかな交流がたくさん生まれることが、新たな価値を生みだす都市づくりにつながり、かつ移動が増えることで街の活性化にもつながる、といった派生効果を得ることもできると考えています。
アイモビのコンセプト誕生と、オープンイノベーションチーム組成秘話
もともとこのアイモビは、横浜みなとみらい スマートシティコンソーシアムのモビリティ分科会を立ち上げた日産自動車から活動パートナーとしてNTTデータにお声がけをいただいたことが始まりです。その共創の場であるデザインワークショップにて、アイモビのコンセプトの原型は誕生しました。
両社の検討の中で、”移動” そのものを”体験” と捉えることで、移動体験を起点にした”ひととひととのゆるやかなつながり” がイノベーションの引き出しとなり、それが都市をイノベーティブにしていくのでは!? という、めざしたい姿が浮かび上がってきました。
この仮説を検証すべく、その最適なフィールドとして、日産自動車といえばやはり横浜、そして横浜市が掲げる『イノベーション都市』というコンセプトへの共感もあって、2021年7月にみなとみらい21のみなさまへアイモビのコンセプトをご紹介しました。みなさまからはアイモビへの共感をいただき、ここに【みなとみらいエリアを起点】【アイモビというあらたな移動体験による、都市空間におけるイノベーション創出】【イノベーション都市・横浜の実現】という私たちのめざす姿の大枠が確立しました。
加えて、『ゆるやかなつながりの形成』というキーワードが、NTTデータ社内の新規事業創造コミュニティ『ビジネスデザインスプリントコミュニティ』に協力いただいているSwap社の取り組みに似ていることから、即座にSwap社CEOの藤沢さんに連絡、共感と快諾をいただいたことで、日産自動車・Swap・NTTデータによるオープンイノベーションチームが結成されたのでした。
アイモビ、EXPOに出展します!
そんなアイモビ、イベント出展という形でみなさまの前に登場します!
プロダクト開発前のためコンセプトのご説明と簡単なデモのみですが、11月10日・11日にパシフィコ横浜で開催される『横浜オープンイノベーションEXPO/ロボットワールド2021』の横浜市経済局ブースに出展させていただきます!
緊急事態宣言後のリアルイベントということも相まって、私たちチーム一同わくわくしています。ぜひ足をお運びください! みなさまへのアイモビのご紹介や、みなさまとのディスカッションを楽しみにしています。
共創における、仲間づくりの大切さ
現時点の私たちの活動は、まだまだ仮説検証の初期フェーズの段階です。しかしオープンイノベーションにおいて最も重要な、『実現したい価値による共感』をひしひしと感じています。そして、会社の規模や事業内容を超えた仲間づくりは、ちょっとしたひらめきとそれを逃さない行動力やつなぐ力が大切だとあらためて感じさせられました。
とは言えアイモビコンセプトはまだよちよち歩き。マーケットやカスタマー候補との対話で育てていく段階にあります。パシフィコ横浜でお待ちしています!
“アイモビ” プロジェクトチームの紹介
プロジェクトに参加した日産自動車とNTTデータのみなさん
左から:日産自動車 河合さん、小林さん、NTTデータ 田中さん、西村さん、小田さん、野口さん
日産自動車株式会社
商品企画本部 商品中長期ビジョン戦略部 主担 三好 健宏
グローバルモビリティサービスビジネス部 主担 河合 諭司
グローバルモビリティサービスビジネス部 シニアスペシャリスト 小林 蛍
コーポレート市場情報統括本部 長期カスタマー戦略部 マーケット・サイエンス・スペシャリスト 片山拓也
株式会社Swap(スワップ)
株式会社Swap(スワップ)CEO 藤沢 勇輔
株式会社NTTデータ
製造ITイノベーション事業本部 第一製造事業部 主任 小田 俊介
C&S事業本部 コンサルティング事業部 課長 西村 祐哉
C&S事業本部 コンサルティング事業部 課長代理 菖蒲 敬人
C&S事業本部 コンサルティング事業部 課長代理 野口 友幸
C&S事業本部 コンサルティング事業部 主任 田中 恵梨子
【役職と所属は記事公開日時点のものです】