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2023.9.21業界トレンド/展望

持続可能性と収益性の両輪経営~NTTデータが考えるサステナビリティ経営とは~

企業の社会貢献の一環として捉えられてきたサステナビリティ活動は、CSR部門が主導し、事業と切り離されて行われることが多かった。
しかし近年、世界的な環境配慮へのトレンドからさまざまな規制が見込まれるほか、企業のサステナビリティに対する姿勢が株主や消費者等のステークホルダーの意思決定にも大きな影響を持つようになってきており、今後は事業活動から経営までサステナビリティにどう向き合うかが問われている。企業はどのようにしてサステナビリティ経営を推進していけばよいのか、まずは多くの企業で取り組みが盛んな、「カーボンニュートラルに向けたGHG排出量削減」を中心に解説する。
目次

日本企業に求められるサステナビリティ経営

「サステナビリティ」は今では全世界共通の課題です。自社の利益最大化を目的にするのではなく、GHG削減、生物多様性、人権の保護など、持続可能性に配慮した社会の実現に向けた取り組みに注力することが企業価値の最大化に繋がるという共通認識が広がりつつあります。
そのため、中期的な事業拡大だけではなく、サステナビリティへの取り組みに注力している企業が市場から高く評価される傾向が強くなってきており、経営としてどのようにサステナビリティに向き合うかが強く問われ始めています。

また、市場における変化にとどまらず、企業の製品・サービスがサステナビリティに準拠しているかどうかが、一般消費者の購買活動にも影響を与えつつあります。例えば、欧州などサステナビリティに敏感な地域では、消費者が社会課題や地球環境を考慮して購買の選択を行う「エシカル消費」が広まりつつありますが、これらは今後日本にも少しずつ浸透していくことが予想されます。

さらに、これらのトレンドに合わせ、サステナビリティに関連した法規制が整備されつつあります。例えば、こうしたルールメイキングでいち早く動きを見せている欧州では、EU域内でバッテリー規制の施行が議論されており、バッテリーの資源リサイクル率やCO2排出量の開示が義務化される予定です。バッテリー規制が施行されれば、日系自動車メーカーが欧州で自動車を販売するためには、欧州が定めた基準を満たさなくてはならなくなります。また、自動車メーカーのみならず、そのサプライチェーンに関わる素材、機械などさまざまな産業が対応を迫られることになります。

こうした動きを見据えて、すでに自動車メーカーの間ではサプライヤーに対して、部品・原材料別のGHG排出量を要請する動きが活発になってきており、この動きは川上から川下に向かって急速に広がりを見せています。

これらの市場や消費者からのサステナビリティに対する関心の高まりや、既存のルール見直しを受け、企業に求められることは、従来の経営指針や過去の成功体験に縛られず、フレキシブルに事業を見直しながら、限られた経営リソースを適切に配分していくことだと考えています。そのためには従来の経営の範疇にとどまらないサステナビリティに関わる広大なデータを入手し、ルール規制への正しい理解を前提として事業の見通しを立てていく必要があります。しかし、これまでと異なる経営のかじ取りを求められることから、各企業が頭を悩ませているのが実情かと思います。

2種類の排出量管理と製品別GHG排出量可視化にむけたポイント

サステナビリティ経営にはさまざまなテーマが存在しますが、直近多くの企業が対応を迫られているのが「カーボンニュートラル」です。日本政府は2050年までのカーボンニュートラルを宣言し、多くの企業はまずは2030年の中期削減目標達成に向けた対応を迫られています。

企業に迫られた「カーボンニュートラルに向けたGHG排出量削減」という課題について、多くの企業が最初にぶつかる壁が自社のGHG排出量を把握する方法です。まず理解しておくべき点としては、企業におけるGHG排出量管理には2つの種類が存在しているという点です。

1つ目は企業価値向上を目的とした「企業全体の排出量管理」です。企業のCSR部門やサステナビリティ部門等が中心となり、サステナビリティレポートなどステークホルダーに対して自社の排出量を市場に開示するために、企業単位でGHGの可視化を行うものです。近年ではTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に沿った開示が実質的に義務化されています。

2つ目が自社製品の排出量を取引先に開示するための「製品・サービスの排出量管理」です。これはCFP(Carbon Footprint of Products)という考え方に基づき、製品・サービス別に原材料調達から処理・処分までのGHG排出量の可視化を行うものです。たとえば、取引先からGHG排出に関する情報の開示を要求される場合に求められるのは、企業全体の排出量ではなく、取引の対象となる製品・サービス別のCFPとなります。前述した自動車業界の例でも自動車メーカーからサプライヤーへCFPの開示要請が求められているほか、欧州のバッテリー規制についても原則CFPの可視化が必要となります。

CFPの算定にあたってカギとなるのは、CFP全体の大部分を占める「GHGプロトコル:Scope3-1」と呼ばれる原材料由来の排出量の把握です。ただ、多くの企業では一次データと呼ばれる各企業の実数値ではなく、二次データと呼ばれるLCIデータベースと呼ばれる共通の排出係数をもとに算出することが多いのが実態です。この方法はデータ正確性に欠けることに加え、上流の企業の削減努力が反映されないことから、産業全体での正確なCFPの把握及び削減のためには、いかに一次データの比率を高め、そのデータをサプライチェーン全体に流通させていくかが重要となります。

まとめると、産業全体でGHG削減を目指すうえでは、「CFPのスピーディかつ正確に可視化する方法」、「中小企業も含めた企業間で1次データを前提としたCFPを流通させていく方法」の2点が大きな課題と考えています。

こうした課題に対する近年の動きとして、一つ目の「CFPのスピーディかつ正確に可視化する方法」から解決しようとする企業が昨年ごろから目立つようになってきました。特に、素材・化学メーカーを中心として、CFP算定のデジタル化を通じスピーディかつ正確な算定を可能とする企業が増えてきています。また、自社のCFPの把握にとどまらず、これらのデータをもとに、BOM/製造プロセス変更シミュレーションを通じた将来の削減計画の提示や、設計段階からCFPをコントロールした魅力的な製品開発を通じ、競合との差別化を図るケースも増えてくると考えられます。
2つ目の「中小企業も含めた企業間で1次データを前提としたCFPを流通させていく方法」については、JEITAが主催する「Green×Digital コンソーシアム」にて仮想サプライチェーン上におけるCO2データ連携の実証実験など、業界を横断した取り組みが加速してきています。

NTTデータが考えるサステナビリティ経営管理基盤

こうしたGHG排出量削減に取り組む企業が増えてくる一方で、カーボンニュートラルを実現する上で経営が悩ましい課題があります。それは「中期収益目標の達成とカーボンニュートラルの達成は両立可能なのか」という点です。カーボンニュートラル目標の達成に向けて各企業は少なからず新たな設備の導入や新製品開発にコストを投資することになります。端的に言えば、このコストを価格に転嫁し顧客に負担してもらえなければ、これらの目標の両立は困難です。しかしながら、現実問題としては、お客さまの理解浸透は道半ばで、価格転嫁はこれからというのが実態だと考えています。

こうした問いに対して答えを導くのは容易ではありませんが、まず重要なのは、「製品別のコストとCFPのバランスを見ながら各事業における舵取りをしていくこと」だとNTTデータは考えています。そのためには、サステナビリティ経営に必要となる情報の管理にとどまらず、事業管理の基礎となる損益情報と一体となって管理する基盤を整備していくことが、適切な意思決定を下すための重要な資産になると考えています。

NTTデータはこうした考えに基づき、各企業の多様なニーズと目的に応えるためにコンサルティング機能を強化するとともに、より多くのご要望に応えるためにCFP可視化と損益可視化を可能にするサステナビリティ経営管理基盤「C-Turtle ForeSus」をリリースしました(※1)

本基盤ではCFP等のサステナビリティに関する情報と損益情報管理の仕組みをテンプレート化しており、初期投資を押さえながらスピーディにCFP算出と損益情報の一体管理を実現可能です。また、企業の基幹システムの情報と連携可能な柔軟性の高いIT基盤(EPMツール)をベースに開発を行っており、必要に応じてCFP以外のサステナビリティ関連データやサプライチェーン管理に必要なデータなど、経営に必要なデータを一元的に管理することが可能です。

(※1)C-Turtle ForeSus

ニュースリリース:https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2023/092100/
C-Turtle ForeSusについて:https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/c-turtle-foresus/
※「C-Turtle」及び「ForeSus」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標又は商標です。

多くの企業様との製品別CFP可視化のプロジェクト実績

NTTデータでは、さまざまな大手製造業様に対してサステナビリティ経営管理の構想からCFP可視化の実践の支援を行って参りました。(※2)
今後「C-Turtle ForeSus」を中心として、さらなるサステナビリティ経営管理基盤の普及を加速させていきたいと考えています。

経営管理基盤が企業を変え、社会を変えていく

これまで各企業は自社の企業価値の最大化に向けて、事業の収益性を最大限重視した経営を行ってきました。今後も事業継続の上で最も重要なのは収益性であることに変わりはありませんが、これからはそれらに加えてGHG排出量等のサステナビリティ指標を重視していくことが求められます。NTTデータはこうした経営管理の変化に対応した戦略検討からシステム実装まで、エンドツーエンドで提供することで企業のサステナビリティ経営を支援していきたいと考えています。

NTTデータグループのグリーンイノベーション推進室では、さまざまな業界動向や規制を把握しながらサステナビリティ経営の実践に取り組んでいます。
さらに、お客さまに提供する事業を通じたサステナビリティ経営の支援、そしてサプライチェーン全体にCFPが流通する産業構造を実現することで、カーボンニュートラルな世界実現に貢献していきたいと考えています。

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