1.はじめに
多くの企業でデジタル活用によるビジネスプロセスやビジネスモデルの変革(デジタル・トランスフォーメーション、以下DXと記載)に向けた取り組みが進められています。しかし、期待どおりの成果を創出できている企業は必ずしも多くはありません。NTTデータはお客さまに成功をもたらすDXの取り組みをデジタルサクセス®(※1)と名付けて、多くのお客さまを支援してきました。
本稿では、これまでの当社の支援経験や、独自アンケート調査(※2)から、各社のDXへの取り組みの現状と課題をご紹介します。
NTTデータでは独自にデジタルサクセス成熟度を定義し、お客さまのアセスメントや目標設定に活用しています。本稿は、企業のDX担当者1000人にアンケートを実施し、現状の成熟度と将来目標、現在の取り組み、課題を確認した結果も踏まえて作成しています。
2.DXの取り組み状況
これまでの当社の支援実績や独自アンケート調査(※2)の結果を確認してみると、各社のDXに向けた取り組みは以下のような状況が多いです。
図1:各社のDXに向けた取り組み状況
DXの取り組みは必ずしも上手くいってなく、各社苦労をしているようです。
実は当社もパートナーとして同様に失敗をしてきた経験もあります。
今回は、よく見受けられる以下の3つの失敗例を当社の失敗談も交えながらご紹介します。
- (1)現場レベルの取り組みは普及しているが、会社レベルの取り組みに昇華できていない
- (2)現場の都合を考えないDX組織の思い・事情が先行した施策展開となっている
- (3)効果に繋がっているか分からない施策の乱立により、DX組織のリソースが枯渇している
3.DX推進における失敗例
(1)現場レベルの取り組みは普及しているが、会社レベルの取り組みに昇華できていない
各部署において、現場レベルでデジタル活用による業務改善の成功事例は出ていますが、自社のビジネス/サービス変革や各部署を跨いだバリューチェーン変革などには挑戦出来ていないというケースです。
部署毎にデジタル活用に挑戦している、もしくは、現場から挙がってきた要望の打ち返しをDX組織が実施し、日常的に成功事例が出てきているものの、立ち止まって大きな計画を描けていないというイメージです。
独自アンケートにおいては、以下のような声が挙がっています。
- “業務プロセスの結果をデータ化し始める等、DXのはじめの一歩に取り組み中であるが全社目線での結果要素が定義、統一化されていない。”
- “事業部間の繋ぎに関してはまだ議論すら始まっていない。”
- “事業所ごとにデジタル推進を行う部門を設置して推進を行っているが、事業所ごとの活動が中心で、全社的な横断活動にはまだ課題がある。”
過去に当社も、大きな方向性・目的がない中で、それを描くことを提案せず、個々の要望に対してテクノロジー(手段)の提供屋に甘んじたことで、同様の経験をしたことがあります。
大きな方向性が無い中での取り組みは、それぞれの事業部の向かいたい方向性が揃っていないため自社の事業貢献等の大きな効果に繋がることは少ないです。
大きな効果に繋がっていないため短期的/一過性での取り組みで終わってしまい、当社とお客さまも短期的な関係性で終わってしまっていました。
このような経験もあり、まずは小さくデジタル活用から始めたお客さまには、一度立ち戻って大局(グランドデザイン)を描くことを勧めています。小さな成功実績の量産に終始するだけでは、次のステップには進めないのです。
現場からこのような取り組みを提案することは難しいため、当社を使っていただき、DX組織に対して会社としてのDX方針具体化に動き出していただくよう働きかけをしていくケースもあります。
大局に立ち戻り、目指すべき方向性を具体化していくことが重要です。
(2)現場の都合を考えないDX組織の思い・事情が先行した施策展開となっている
上層部やDX組織の都合が優先されて各種施策の推進がされている、または事業部や現場が持っている課題に即していないため、現場が協力的ではない/やりたがらないため成果に繋がらないケースです。
実際のイメージとしては、DX推進の花火を打ち上げる起爆剤としての狙いで、既存事業部とは独立する形で組織を設立。しかし、DX組織が各事業部の状況(取り組みたい課題、リソース、スキル/リテラシー、等)を十分考慮できないまま、実業務に繋がりづらいメリハリのないOFF-JT施策が展開されている、などです。
アンケートにおける、各社の実際の声です。
- “意思決定や業務へのデータを活用進めているが、現場の受けとめ方や活用・浸透レベルはまちまち。抵抗勢力も多い。”
- “現場でデジタル化、DXが必要と感じられておらず、危機感が共有されていない。一方、経営層はDXの推進について必要性を理解して、コミットメントしているが、現場のオペレーションについて理解していないので掛け声倒れになるリスクを孕んでいる”
当社でもDX組織を支援する際に同様に失敗した経験があります。
営業系組織において、営業活動を高度化するためにデータ分析を実施し各種施策を導出しましたが、各支店に展開しようとした際、稼働が逼迫しているため新規施策を実施する余地が無いという反応がありました。よくよくヒアリングを重ねてみると、現場担当者は経営管理のための集計作業に多くの稼働を割いており、これこそが最初に取り組む必要がある課題と判明した、というものです。
こういった経験もあり、DX組織をご支援する際には、新規取り組みをするのと同時に、既存の足元の課題解決もセットで実施することを推奨しています。
アピール効果が大きい高度なデータ分析だけに取り組むのではなく、基礎的な取り組みでも十分恩恵を受けられることは多いです。
また、新規取り組み自体も、各事業部の実施したいことや課題解決に根差したものであることが望ましいです。そのため、絵に書いた餅にならないように、ボトムアップ(現場のニーズ)とトップダウン(会社の向かうべき方向性)の両方が重なる領域を具体化していくようにしています。
(3)効果に繋がっているか分からない施策の乱立により、DX組織のリソースが枯渇している
手広く、色々と施策を立ち上げており、やりたいことに対してDX組織のリソースが枯渇しているケースです。
その原因は、施策の立ち上げはするがその振り返りが出来ていないため、各施策が効果に繋がっているか分からなく、惰性で施策が続いてることがあると考えます。施策は見直し・減ることはなく追加のみされていき、成果より先に対応工数のみが山積していっている可能性があります。
アンケートにおいては、以下のような声が挙がっています。
- “育成方針を策定し、各分野で必要な人財像を定義し、外部研修などを活用し社内教育体制を充実させているが、効果のあるデジタル教育が実施できているか効果測定が困難”
- “データ整備、分析をする対象をメリット踏まえて整理しているが、メリットの可視化・定量化が難しく、なんとなくやるべき論でやっている”
関連するケースとして、ビッグデータなどのバズワードが流行した時代に、PoCが成功・失敗かの基準が不明確な中で、とりあえず技術に触れてみたいという中で各種施策が延々と試されており、多くの「PoC試行」でお客さま、当社ともに疲弊してしまうという経験をしたことがあります。
また、実践してみると実は効果に繋がらなかった、ということは多くあると思います。しかし、上位層に一度「やる」と言ってしまったものを失敗とは言えないので、成果に繋がっていないのにも関わらず継続し、それに応えるために我々もお付き合いをし続けてしまう、というケースもありました。
そういった経験も踏まえ、各種施策が効果に繋がっているか振り返りながら、拡大をしていくアプローチを取っています。
各種施策の進捗、効果の振り返り、継続判断をDX組織で管理できるプロセスの構築をして、ときには中断や再計画を行っていただくようにしています。
効果の振り返りに向けては、成功している状態・計測方法の定義、その状態に至るためのKPI具体化、それを定量的にモニタリングするプロセス・仕組みの構築までご支援しています。
4.NTTデータの経験が詰まったデジタルサクセス®プログラム
お客さまにデジタルで成功していただくこと/成功をもたらすこと、そして結果的に当社も長期的なパートナーとして選ばれ続けることを目的に、デジタルサクセス®プログラムを用意しています。
これまでご紹介した各社の状況や、当社の経験も踏まえ、デジタルサクセス®プログラムでは、変革の方向性を大きく・ざっくりと考え、変革に向けた各テーマ現場を巻き込みながら小さく・クイックにスタートさせ、改善サイクルを習慣付けて拡大するアプローチを取っています。
また、今回はご紹介できませんでしたが、「ビジネス」「データ・アナリティクス」「IT・Tech」「人財・組織」の4要素をバランス良く進めることも、成功に向けたポイントになります。
サクセスプランの立案、施行活用、定着化/拡大の各フェーズで全ての要素を一気通貫でサポートします。DX推進に悩みを抱えている方は是非ご相談ください。
図3:DXの成功を支える“デジタルサクセス®プログラム”
デジタル変革・DXを成功に導く「デジタルサクセス」の詳細はこちら:
https://enterprise-aiiot.nttdata.com/service/digital_success
組織人材戦略の策定・実行で企業変革を支援する「変革支援コンサルティング」はこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/transformation-support/
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