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2024.6.7業界トレンド/展望

環境情報で企業プレゼンスを向上させる
NTT DATAの「自然関連情報開示向けコンサルティングサービス」

企業活動のサステナビリティへの関心が国際的に高まる中、NTT DATAは、TNFDのガイドラインに基づいた「自然関連情報開示向けコンサルティングサービス」の提供をスタートした。自然資本と事業との関係性をどのように調査し、どのように環境情報を開示していくべきなのか。NTT DATAとクニエの包括的な支援を紹介する。
目次

(左から)株式会社NTTデータグループ 吉田 陽一、小針 喜幸、株式会社クニエ 今 真理子(2024年2月時点)

(左から)株式会社NTTデータグループ 吉田 陽一、小針 喜幸、株式会社クニエ 今 真理子(2024年2月時点)

企業に対する環境情報開示の潮流

近年、環境に関する企業の情報開示を求める動きが加速化している。気候変動関連の情報開示については、2017年にG20の要請で発足したTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)が「企業は、気候関連財務情報開示を」「投資家は、それに基づいた投資判断を」と求めたことを受け、TCFD開示を取り入れる企業は過去から増加傾向を続けており、2022年時点で、TCFD開示項目の11項目のうち1項目以上開示する企業は90%、5項目以上開示する企業は58%に達した(※1)。今後もますますその動きが加速していくであろうことは、もはや疑いようがない。

こうした気候変動関連の情報開示に加え、今般、汚染・水資源・生物多様性・資源利用に関する情報の開示が出てきている。代表的な動きは、“TNFD(Task Force on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース)”だ。

また、2023年1月、CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive:企業サステナビリティ報告指令)がEUで発効され、EU域内で活動する企業は義務として「サステナビリティ情報」の開示を段階的に求められることとなった。CSRDが求める報告基準であるESRS(欧州サステナビリティ報告基準)の環境項目では、気候変動に加え汚染・水資源・生物多様性・資源利用に関する項目の開示を求めており、TNFDを用いた開示内容と足並みを揃える形で整理がなされている。日本企業であっても、一定規模以上の子会社をEUに持つ場合は規模等に応じて2025年会計年度以降順次、日本親会社への適用であるEU域外適用についても2028年会計年度から、それぞれ適用開始となる。開示内容については第三者保証が必要と、信頼性を高めた情報開示が求められる。TNFDに基づく自然関連財務情報開示は義務化を見据えた活動の第一歩ともなる。

すべての事業活動は「自然資本」がなければ成り立たない。土地や水資源はもちろんのこと、生物同士の極めて複雑な関係がもたらす「生態系サービス」がなければ、ビジネスどころか、生きることさえままならない。しかし現在、2023年12月に公表されたIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、44,000種以上の生物が絶滅危惧種と評価されており(※2)、2019年公表の30,178種(※3)と比較すると13,000種超増加している。このように生物多様性は急激に失われつつあり、生態系の劣化が深刻化している。

そのビジネスは、どの自然資本から恩恵を受けているのか?関係性を自覚し、負荷を知り、今後の事業をどうしていくのか?こうした情報を開示することが、自然関連情報開示の求めるところである。しかし、これらを調べることは、温室効果ガス排出量を測るよりもさらに難しい。そのため、NTT DATAが2023年から提供を開始したのが、自然関連の情報開示について環境分析から戦略立案、実行支援までを一貫して支援する「自然関連情報開示向けコンサルティングサービス」である。

図1:自然関連情報開示に関するコンサルティングサービス概要

図1:自然関連情報開示に関するコンサルティングサービス概要

(※1)

TCFD Status Report2023(TCFD/2023年10月)

(※2)

The IUCN Red List of Threatened Species. Version 2023-1(TCFD/2023年12月)

(※3)

国際自然保護連合(IUCN)(外務省/2019年12月16日)

自然関連リスクのプロフェッショナル支援

株式会社NTTデータグループ コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進部 グリーンイノベーション推進室 課長 小針 喜幸は、自然関連情報開示向けコンサルティングサービスの提供を始めた背景を次のように語る。

「NTT DATAは、以前から社内の環境情報を積極的に開示してきました。気候変動分野では情報開示の透明性とリーダーシップが評価され、CDPによる国際的な調査で最高ランクの『A』を2年連続で獲得いたしました。そしてTNFDではガイドラインがβ版の段階から着手しており、全世界の操業拠点における生物多様性への影響や、水リスクの状況を公開しています。こうした海外グループ会社を巻き込んだ開示の実体験をもとに、ノウハウをソリューション化したものが、『自然関連情報開示向けコンサルティングサービス』なのです」(小針)

同サービスへの反響は予想以上のものがあったと、小針は続ける。

株式会社NTTデータグループ コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進部 グリーンイノベーション推進室 課長 小針 喜幸

株式会社NTTデータグループ コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進部 グリーンイノベーション推進室 課長 小針 喜幸

「リリースに対し予想以上のご相談をいただき、みなさま非常に高い関心があるのだと感じました。またその際、『何をどこまで調査し、開示すればいいか分からない』という悩みも多く聞きました。いかにして事業活動と自然との関係を可視化するのか。データを活用し、ネイチャーポジティブな事業運営を実現していくのか。NTT DATAとしての包括的なご支援が欠かせないと思っています」(小針)

NTT DATAのビジネスコンサルティングファームである株式会社クニエのシニアコンサルタント 今 真理子は、本サービスの受託案件の実務にあたっている一人だ。実際、企業はどのような流れで自然関連情報開示にアプローチしているのだろうか?

「TNFDで提唱する“LEAP”という分析のフレームワークがあります。地域のセンシティビティをふまえた自然と事業活動の接点を特定し(Locate)、自然への依存と影響の評価をおこない(Evaluate)、リスクと機会の重要性を評価し(Assess)、戦略と目標の設定と開示準備をする(Prepare)という4つのステップで構成されています。会社の検討課題とこのフレームワークを組み合わせて、具体化するところから着手しています」(今)

図2:調査範囲の決定からLEAPプロセスに沿った調査・分析・開示の流れ

図2:調査範囲の決定からLEAPプロセスに沿った調査・分析・開示の流れ

ポイントは、早期かつ段階的に取り組むこと

事業と自然資本との相互関係を調べることは、簡単ではない。企業活動について、土地利用変化、汚染、資源利用など多くの観点から見直す必要があり、また定量的な指標で示すことも求められる。どれも明確な判断基準が確立しているとはいえず、企業側からすると、取り組みのハードルが高いものに感じられるだろう。さらにグローバルなサプライチェーンを対象にするには、上流に遡り、原材料の一次情報を調べることの困難性が伴う。そのため、『いきなり100%の開示を目指さずに、まずは重要度・関心度の高い領域から着手していくことが重要』だと、今は語る。

株式会社クニエ シニアコンサルタント 今 真理子

株式会社クニエ シニアコンサルタント 今 真理子

「たとえば、直接操業から始める、複数の調達材の中でも木材のように世界的に規制が厳しくなっているものから着手する、一次情報が入手できなければ二次情報等も活用してまずはリスクを把握する、といった段階的な対応が適切だと言えるでしょう。自然関連情報開示は、世界的に始まったばかりです。今はまだ自主的に開示範囲を決めることができ、かつ開示により一定の評価を得られる段階ですが、いずれは制度化が進んでいくことが考えられますので、取り組みハードルが低い今のうちから始めることが望ましいです」(今)

環境情報の価値とその影響力まとめ

環境や社会に配慮した企業を評価し、金融の流れを自然再興やレジリエンスの高い社会へ貢献する企業へ振り向ける考えが特に欧州勢で増している。取引段階においても、サステナビリティ情報が厳格に見られるようになった。今後、環境情報はますます重要になると、株式会社NTTデータグループ コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進部 グリーンイノベーション推進室 課長代理 吉田 陽一は話す。

株式会社NTTデータグループ コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進部 グリーンイノベーション推進室 課長代理 吉田 陽一

株式会社NTTデータグループ コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進部 グリーンイノベーション推進室 課長代理 吉田 陽一

「気候変動の分野はとくに顕著で、Appleやトヨタといった世界的企業はすでに『環境負荷の低い部品しか調達しない』と宣言しています。当社のお客様も、サプライヤーに対して同様の姿勢を示すようになってきました。これから自然資本の分野でも同様の動きになっていくと共に、地域住民などのより広い利害関係者を対象とするステークホルダー・エンゲージメントのプロセス設計を目指すこととなるでしょう。また、環境は若い世代ほど関心の高いテーマであり、弊社にも強い思いを抱いてインターンに来る学生が増えています。今後、社会を構成する世代のニーズに向けても、今のうちから『自社と自然環境の関係』を把握し活かす事業体制を整えていくことが重要なのだと思います」(吉田)

最後に、NTT DATAとして、自然関連情報開示の支援を通じてどのような価値を届けたいのか、小針・吉田の両名に語ってもらった。

「環境配慮という企業の努力を、いかにインセンティブに変えるかが不可欠だと考えています。NTT DATAは、コンサルティングにとどまらず、高精度衛星データを用いた測定や、ブロックチェーン技術を用いたトレーサビリティ確保、自然関連データの経営管理プラットフォームといったさまざまな可視化ソリューションを有しています。情報開示のみを目的とせず、お客様自身の商品開発やプレゼンスを向上するための自然関連情報開示、という観点で支援をして参ります」(小針)

「NTT DATAは、情報技術で、新しい『しくみ』や『価値』を創造し、より豊かで調和の取れた社会に貢献することを企業理念に掲げています。自社の事業活動が自然資本にいかに依存し影響を与えているか、そしてそのリスクと機会を分析する自然関連情報開示活動は調和のとれた社会を実現する象徴の一つになると思います。情報開示が負担ではなく、企業価値の向上となるように、意味のある支援に努めていきます」(吉田)

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