ブロックチェーンの概要
近年、サステナビリティへの関心や重要性は高まり続けており、サステナブル投資は主流となっています。一方で、普段携わっている業務や技術がサステナビリティとどのように結びつくのか、どのように活かしていけるのか、うまくイメージしきれていない方も多いのではないでしょうか。
この連載では、「技術」観点で、テクノロジー×サステナビリティのトレンドや具体事例などを紹介します。全10個の技術テーマを取り上げる予定であり、今回はブロックチェーンに注目します。近年、ブロックチェーン技術は取引の透明性向上やデータのセキュリティ強化など、さまざまな分野で活用されており、特に情報の記録と管理に優れた特性を持っています。本記事では、ブロックチェーンとサステナビリティをかけ合わせた時にどのようなトレンドや事例があるのか見ていきます。
ブロックチェーンのトレンド
ここではまずブロックチェーン市場を紐解いていきます。
ブロックチェーン市場は世界的に拡大しており、2024年の278億4,000万ドルの市場規模から、2032年には8,259億3,000万ドルに達すると予想されています(※1)。
このようにブロックチェーン市場が成長を遂げる中で、サステナビリティの課題解決に向けたブロックチェーン技術の活用も進んでいます。例えば、サプライチェーンの透明性を高めるために、原材料の調達から製品の流通まですべての過程をブロックチェーンで追跡するサービスがあります。この取り組みによって、生産過程における無駄を減らすことができ、結果として環境負荷の低減にもつながります。さらに、製品がどのような労働環境で作られたかを確認でき、労働条件の適正化や不正な労働慣行の排除にも役立ちます。こうした取り組みは、SDGsの目標である「産業と技術革新の基盤をつくろう」や「平和と公正をすべての人に」などの達成にも貢献すると考えられます。
一方で、ブロックチェーン技術の利活用には環境負荷の問題も伴います。特にアルゴリズムによっては多くの電力を消費することがあり、再生可能エネルギーの活用やエネルギー効率の向上が重要な課題となっています。
NTT DATAのブロックチェーンにおける取り組み
次に、NTT DATAでのブロックチェーンに関する取り組みを紹介します。企業に対する自然関連情報の開示要求が国際的に高まる中、NTT DATAはブロックチェーン技術を活用し、サプライチェーン全体で情報を一元化する技術の開発を進めています。この技術により、サプライチェーンに関わるすべての関係者が信頼性の高いデータを共有し、業務の効率化を実現することができます。
エクアドルの水産加工企業Tecopescaは、缶詰マグロを製造・輸出しており、漁獲資源減少とIUU漁業(違法:Illegal、無報告:Unreported、無規制:Unregulated)への対応が求められています。この課題に対処するため、NTT DATAと共同で、ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティシステム「IoTrace」を導入しました。システムの導入により、サプライチェーン全体の透明性を確保するとともに、適法な漁獲の証明を行っています。
また、サプライチェーン全体でリアルタイムの情報共有が可能となり、業務の効率化が進みました。これにより、従業員は情報に基づいた意思決定ができるようになり、各自が積極的に業務改善に取り組む姿勢が強まりました。また、金融機関や下流企業に対して信頼性の高い情報を提供し、サプライチェーンをよりサステナブルで透明性の高いものにするために必要なアクションが明確になりました。今後は、消費者にもサステナビリティ情報を提供する展開が期待されています。
詳細についてはこちらの記事(※2)をご覧ください。
https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2023/0217/
最後に
テクノロジー×サステナビリティと題して、連載の第8回ではブロックチェーンとサステナビリティのトレンドを解説してきました。本記事で紹介した内容の詳細に加え、ホワイトペーパーでは他社での事例などについてもまとめています。(※3)
冒頭でも述べた通り、ブロックチェーンの活用は、「産業と技術革新の基盤をつくろう」をはじめとするSDGsの目標達成に貢献することができるでしょう。一方で、ブロックチェーンの利用には多くの電力を必要とします。そのため、サステナビリティの観点では、今後再生可能エネルギーの利用やエネルギー効率を向上させることも重要な目標となってきます。
ブロックチェーンによる運用改善などのメリットだけでなく、環境負荷などのデメリットについても理解しながら技術を利活用し、「持続可能な社会」を目指していくことが重要です。

図:ホワイトペーパーの構成
NTT DATAでは、「普段業務で活用している技術がサステナビリティにどのように関連するのかを知り、サステナビリティをより身近に感じること」を目的として、全10個の技術テーマについてホワイトペーパーを公開予定です。
最終回の次回は、データ連携基盤について取り上げる予定です。ご期待ください。
カーボンニュートラルについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/carbon-neutral/
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