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はじめに:RevOpsとは?
B2B企業の販売・マーケティング領域において、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスなど営業プロセスにおける分業化が進んでいます。分業は業務効率化に寄与する一方で、「組織間の連携が困難になった」という声もよく耳にします。この課題を解決するために、分業化された組織・プロセス・テクノロジー・データの統合を重視しながらカスタマーエクスペリエンス(CX)を最大化するための概念として注目されているのが「RevOps」です。
RevOpsを推進する組織は、デジタル基盤の統合や運用を一括管理し、データドリブンな調整・支援を行います。これにより、以下のような効果が期待されます。
- レベニュー最大化:各組織が連携することで売上、利益が向上する
- CX最大化:各組織が、顧客にどのような体験を提供すべきかを共通認識化することで、顧客体験価値を高められる
- コスト削減:各組織が連携することで無駄なコストを減らせる
- 意思決定の改善:データと分析に基づいて、企業のより良い意思決定を促進する
今後2025年までに世界で最も成長している企業の約8割近くがRevOpsを導入予定というレポート結果があり(大手調査会社調べ)、世界的にRevOpsの導入が拡大することは間違いないでしょう。
RevOps実行における3つの障壁
しかしながら、日本企業の営業組織においてRevOpsを実行することは簡単ではありません。なぜなら、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスなど収益を生み出す部門では、自組織個別の効率化が優先されてしまい、組織横断の一体化はおろか、逆に組織間の分断が進行してしまう傾向があるためです。
図1:営業プロセスにおける組織間の分断
例えば、本来はDXの一環で導入されたCRM・SFA・MAなどのテクノロジーが、組織ごとに個別最適化されることで、組織・プロセスの分断を助長するといったケースを耳にしたことがあるのではないでしょうか。このようなRevOps実行を難しくするよくある障壁を3つ解説します。
(1)オペレーションの個別最適化
営業プロセスは製造プロセスのように工程やアウトプットに一貫した統制が必要なく、各組織が連携せずとも業務が一定成り立つという特徴があります。そのため、各営業組織は個別最適な活動に走りがちであり、シームレスな顧客対応や組織間のクロスセルによる収益拡大が進まないといった結果を招くことになります。
(2)テクノロジー活用の個別最適化
各組織がそれぞれ個別にテクノロジー導入やカスタマイズを行うため、テクノロジー同士の連携がとれず、データも分断してしまいます。データの形式や定義、構造が組織によってバラバラになるため、横断でのデータ活用の障壁となります。
(3)データ蓄積の停滞
SFAやCRMなどのテクノロジーは活用せずとも業務が一定成り立つため、活用が一向に進まず、結果としてデータ蓄積が滞っているケースがあります。特にハイパフォーマーは自身の業務プロセスが確立していることから、新たなテクノロジーの活用やプロセスの変化自体をデメリットと捉える傾向にあります。それによってそもそもテクノロジー活用に資するデータが蓄積されないという課題が生じます。
こうしたテクノロジー・データの分断・サイロ化によって、多くの組織で顧客理解のために必要な営業データが収集できていないのが実情です。その結果、営業組織全体で連続的な価値提供ができなくなり、顧客体験の悪化につながるリスクがあります。
どのようにRevOpsに着手するか?最大のハードルは「人材・体制」
日本でもSales Engagement Platformなど、組織横断データをインプットし、顧客エンゲージメントを深めるための行動を行えるようにするテクノロジーが登場しており、RevOpsの実行がしやすい環境が徐々に形成されつつあります。
一方、日本企業でRevOpsに本格的に取り組めている企業は、現在のところ非常に少なくなっています。なぜなら、RevOpsの実行を支援するテクノロジーがいくら拡充しても、最大のハードルとなるのは「人材・体制」であるからです。
人材面のハードル
組織横断でのRevOpsを推進するための知見に加え、既存の組織・プロセス・テクノロジー・データのしがらみにも負けずに、中長期でマネジメントを完遂できる胆力のある人材が不可欠となります。このような人材は極めて稀な存在です。
体制面のハードル
日本企業ではRevOpsを担う組織横断の専門チームが存在せず、旗を振る組織がマーケティングなのか営業なのか、なかなか定まらない傾向があります。
この根深い問題の解決に向けては、新たなアプローチが生まれつつあります。昨今、米国で市場が急拡大しているBPaaS(Business Process as a Service、特定業務のビジネスプロセスそのものを外注できるサービス)やBPS(Business Prosses Services、特定業務においてDX戦略や人材戦略など、総合的に課題を解決するためのソリューション立案を外注するサービス)のように、第三者という立場を生かし、「組織・プロセス・テクノロジー・データの再設計」「設計に基づく実装・統合」「オペレーションの代行(検証)・改善」を一気通貫で担ってくれるサービスを利用するアプローチです。
BPaaSやBPSを利用することで、着手が困難なRevOpsの実行をクイックかつスモールに開始し、「RevOpsの実行範囲の拡大」と「社内のRevOps人材の育成」に同時並行で取り組むことが可能となります。
RevOpsを実行するための、NTTデータの取り組みとは
NTTデータでは、「変化し続ける顧客の状態を、マーケティングとフィールドセールスの双方がリアルタイムに把握・共有することで、部門横断的な協力関係を生み出すことができる」という考えのもと、この2組織の中間に存在する「インサイドセールス」を主体としたRevOps実行の取り組みを開始しました。2024年6月より提供開始した「インサイドセールスBusiness Process Services」では、エンタープライズ企業のB2B営業組織の売上最大化に向けて、先述した課題を乗り越える取り組みを行っています。
図2:RevOps実行に向けインサイドセールスを機能させるためのアーキテクチャ
NTTデータは、「インサイドセールスBusiness Process Services」を通して、RevOpsの実行支援に特化したSales Engagement Platform(SEP)を活用した検証を実施しました。伝統的な大企業かつ既に分業化が進んでいる状況を想定した検証では、SEP活用だけで1.5倍の生産性向上が見込めるという結果となりました。また、SEP以外のテクノロジーやデータ(音声解析ツール、インテントデータ、生成AIなど)を活用することで10倍以上の生産性向上を目指すことができる見通しもついています。
この結果は、インサイドセールスのオペレーションを起点にすることで他部門の課題抽出・解決につなげられることを示唆しています。
図3:インサイドセールスBPSの展望
RevOps実行への着手が最も困難なケース(伝統的な大企業かつ既に分業化が進んでいる状況)においても、この新たなアプローチを取り入れることで、比較的容易にRevOpsを実行できる可能性があると考えています。
サービスの内容はこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2024/061401/
おわりに:RevOpsを導入するにあたって
RevOpsの重要性とその実行に立ちはだかる3つの障壁について解説しました。日本企業がRevOpsを成功させるためには、オペレーションやテクノロジーの個別最適化、データ蓄積の停滞といった障壁に対処し、組織横断的な連携を強化する必要があります。しかし、大きな企業であればあるほど、導入するには、RevOpsの導入や実行に関して詳しい人や企業の協力が必要になるでしょう。
NTTデータでは、企業のCX戦略の在るべき姿と取り組むべき施策を明確化し、営業組織の分業化による課題を抱える企業や、RevOps導入に悩む企業に対して課題解決支援を行っています。
AIを活用した「インサイドセールスBPS」の提供により部門横断での売上最大化を支援
~企画・実行・改善をワンストップで提供し、フィールドセールス部門の業務過多や各部門間の分断を解決~ついてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2024/061401/
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