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2024.7.19

CDP2024コーポレート完全版質問書を読み解く

CDPとは、2000年にイギリスで設立された国際的な環境NGOである。
組織における環境・サステナビリティの取組みに関する情報開示システムを運営しており、環境へのインパクトの認識・開示を通じて、環境に対するインパクトの管理・低減を促進することを目指している。
世界で最も充実したデータセットを保有しており、世界中の投資家、購買企業、政策決定者におけるデータドリブンな意思決定に貢献している。
本記事では、CDPが年次で発行する質問書ならびにその情報開示システムについて、その内容をわかりやすく解説する。
目次

CDP質問書とは

CDPの情報開示システムの根幹を担うのがCDP質問書です。企業の環境・サステナビリティ情報を活用したいと考えている金融機関等の情報開示要請者の代理人として、CDPが環境・サステナビリティに関する質問書を作成、組織に対して送付、回答を要請しています。CDPは、得られた回答を情報開示ポータルへ掲載し情報開示要請者のアクセスを可能にすると同時に、独自スコアリング・分析を行い、当該結果についてもポータル上に公開しています。情報開示要請者は、回答企業の環境格付けやエンゲージメント方針の策定において、これらのCDPが公開するデータを活用します。
情報開示組織においては、CDP質問書に回答することで、情報開示要請者とのコミュニケーションを個別に行わずとも、まとめて自社の取組み状況を対外的に訴求することができる他、回答作業のなかで環境・サステナビリティに関して自社が注力すべきポイントや課題等を把握することも可能となります。

CDP質問書に関する2024年度のスケジュール

2024年6月にオンライン回答システムがオープンされ、組織が回答を行えるようになりました。内容に対するCDPによるスコアリングを希望する場合は、9月18日までに回答を完了する必要があります。

図1:2024年CDP回答スケジュール

図1:2024年CDP回答スケジュール

2024年度版CDP質問書の概要

2024年度版CDP質問書における昨年度からの大きな変更点は(1)質問書の統合・再構成、(2)IFRS S2基準への適合の2点です。

図2:2024年度CDP質問書の主な変更点

図2:2024年度CDP質問書の主な変更点

(1)質問書の統合・再構成

昨年度まで、CDP質問書は気候変動、森林、水セキュリティの3つが独立して作成され、回答する組織自身が要請に応じて質問書を選択して回答する運用でしたが、2024年度からは、全ての質問書が一本化され、環境テーマ別モジュールとして設問が用意されました。また、気候変動に内包されていた生物多様性に関する設問、水セキュリティに内包されていたプラスチックに関する設問についても、環境テーマ別の個別モジュールが設定されました。このように、質問書は一つに統合される一方で、気候変動、森林、水セキュリティのスコアリングは独立・個別に実施されます。プラスチック、生物多様性は全企業が回答対象ですが、スコアリングの対象にはなりません。なお、森林、水セキュリティの回答要請状況はCDPウェブサイト上で確認することができます。

(2)IFRS S2基準への適合

IFRS S2(※1)基準の要項で定められている37項目のうち、具体的な開示項目に関する要求が15項目あります。2024年度は、これら15項目に対応する設問が設定されました。これは、CDP質問書に回答すれば、グローバルスタンダードとして要求されているサステナビリティ情報について必要十分な対応ができるということを意味します。

2024年度版CDP設問の傾向

図3:CDP設問別分布

図3:CDP設問別分布

左のグラフはモジュール別の設問数を整理したもので、モジュール7:環境パフォーマンス - 気候変動の設問数が突出して多くなっています。
詳細な定量情報まで問われており、気候変動に関するデータを、全体と部分が整合するかたちで一元的に管理することの重要性が高まっているといえます。
また、目標値とその進捗状況を問う設問は、他の設問と比しても高い配点が与えられており、気候変動対応に関する着実な進捗と成果を出すことが求められているともいえます。
なお、右のグラフで示している通り、昨年度と比較するとおよそ半分の設問が新設または変更されており、昨年度までの回答内容を踏襲するだけでは高いスコアを狙うことは困難です。新設・変更された設問内容を正しく理解したうえで回答することが求められます。

スコアアップを目指すには~VCに対する認識の必要性~

表:2024年度版CDP質問書(バリューチェーン関連設問抜粋)

表:2024年度版CDP質問書(バリューチェーン関連設問抜粋)

スコアB以上を目指す場合、「開示」、「認識」の合計75.5点は、各設問において取りこぼしを最小化する必要があります。2024年度版のCDP質問書では、自社の事業活動に結び付くバリューチェーンがどのような事業者・ステークホルダーから構成され、どこに環境リスクが存在するかを可視化・認識しているか、といった設問があり、これらの設問の配点は決して小さくありません。バリューチェーンに潜在する課題の解決に向けた実効的なアクションが求められているといえます。

このようなアクションをとるためには、企業はバリューチェーン・サプライチェーンを整理・可視化し、現状を把握することが必要です。ただ、取引先の情報も含めた可視化には膨大な労力が求められ、環境対応が企業にとっての課題となる一つの要因となっています。
こうした課題を解決するツールとして、NTTデータがご提供するGHG排出量可視化プラットフォーム「C-Turtle®(※2)」があります。C-Turtleを通してサプライチェーン上のGHG排出量を可視化することで、現状を把握し、算定の工数を削減できるだけでなく、取引先企業とともに気候変動の対応を進めるサプライヤエンゲージメントを促進することが可能となります。

(※2) C-Turtleは、NTTデータが提供する国内初「総排出量配分方式」対応GHG排出量可視化プラットフォームです。

https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/c-turtle/

C-Turtleのご紹介

NTTデータは、2023年にCDPとの戦略的パートナーシップの強化(※3)を発表し、サプライチェーン全体でのGHG排出量削減に向け、NTTデータが提供するGHG排出量可視化プラットフォーム「C-Turtle®」を通じたCDP質問書へのシームレスな回答の実現等も視野に取り組みを進めています。

図4:CDPゴールド認定パートナーロゴ

図4:CDPゴールド認定パートナーロゴ

図5:CDPとの共同登壇

図5:CDPとの共同登壇

C-Turtleは、サプライチェーンの全体のつながりを構築し、サプライチェーン全体のCO2排出量をより簡単に可視化し、社会全体でのカーボンニュートラル実現をサポートしています。

CDPデータを含む一次データを活用したGHG排出量算定が可能

NTTデータは、CDPゴールド認定パートナー(※4)として、CDPの推進する「GHG排出量の可視化や削減を広くサプライチェーンを通じて取り組む活動」への貢献方法を検討してきました。「自社だけではなくサプライチェーン全体でGHG排出量算定を行い、サプライチェーン前後の企業と共創することでGHG排出量を削減していく」という理念をCDPと共にしたことにより、国内企業として初めてCDPデータの使用許諾契約の締結へとつながり、NTTデータが提供するC-Turtle上でのCDPデータの使用が可能になりました。
C-Turtleは、サプライヤの削減努力を反映できる「総排出量配分方式」を採用しており、NTTデータが独自に収集したデータとCDPが保有するデータを組み合わせ、現実的な一次データを活用した削減可能なScope3算定を実現しています。

CDPと共にNTTデータがめざすこと

NTTデータは、C-TurtleでのCDPデータの使用にとどまらず、C-Turtleを通じたCDP回答等の対応をCDPを交えて継続検討することで、排出量算定自体を目的とせず、排出量削減に繋がるサプライヤエンゲージメントを促すような可視化を実現していきます。

(※3) 国際NGO CDPとの戦略的パートナーシップを強化

https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2023/091300/

(※4) 日本で初めての「CDPゴールド認定パートナー」に認定
~全世界で社会の脱炭素化に向けたグリーンイノベーションを推進~

https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2022/030101/

問い合わせ先:
コンサルティング事業本部 サステナビリティサービス&ストラテジー推進室
mis-mfg3-green@kits.nttdata.co.jp

(※)「C-Turtle®」は日本国内における株式会社NTTデータの商標です。
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