はじめに:RevOpsの注目のきっかけ
B2B企業の販売・マーケティング領域において、米国を中心に近年Revenue Operations(以下、RevOps)が注目を浴びています。RevOpsの注目のきっかけはThe Modelに代表されるマーケティング、セールス、カスタマーサクセスなどの営業プロセスにおける分業化が進み、組織間の連携が困難になったためです。The Model型による業務の分業体制では、しばしば以下のような問題が発生します。
(1)各組織のターゲットが異なる:
デジタルマーケティング、インサイドセールスがリード顧客を獲得し、それをフィールドセールスに提供したが、フィールドセールスのターゲットとは異なっていた。そのため、フィールドセールスによる商談・受注に繋がりにくい結果となった。
(2)各組織のKPIが個別最適化されている:
セールスが新規受注を多数獲得するものの、それが無理な受注となっており、受注後にプロダクトの解約が相次いでしまう。
(3)各組織で顧客情報が分散・クローズ化している:
各組織が得た顧客情報が組織間に共有されず、顧客ニーズがプロダクト、顧客対応などに上手く反映されず、顧客体験が悪化してしまう。
図1:The Model導入時による業務分業化の問題
The Model型が持つこのような問題への対処として、RevOpsが注目されるようになりました。また、TheModel型で取り組む企業における分業化の問題点への対処以外にも、海外では株式市場において早期で確実な成長が見込める企業が評価されているトレンドを受け、その為の科学的な管理方法としてRevOpsが注目されている側面もあります。では、RevOpsとは一体何なのでしょうか?
RevOpsとは?
RevOpsとは、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスなどの営業プロセスを横断的に見て、各組織とコラボレーションしながらレベニューおよびカスタマーエクスペリエンス(以下、CX)最大化を目指す概念です。そして、RevOpsを推進する組織が、各組織に対してデータドリブンな調整・支援を行う事で、全体最適へと導きます。もう少しイメージしやすいよう、前章のThe Model型で挙げた諸問題に対し、RevOpsを活用することでどのように対処できるかを以下に示します。
(1)各組織でターゲットが異なる
RevOps組織が企業全体でターゲット設定を行い、そのターゲットに対して各組織が営業活動を行えるようになる。
(2)各組織のKPIが個別最適化されている
RevOps組織が組織横断でKPI再定義、モニタリング、課題解決を支援することにより、全体最適でレベニュー最大化を目指せる体制を構築できる。
(3)各組織で顧客情報が分散・クローズ化している
RevOps組織による組織横断での顧客情報の統合・共有により、CX最大化を目指せる体制を構築できる。
図2:RevOpsとは
RevOpsが分業化の問題に対処し、データドリブンのアプローチで企業のレベニュー・CXの最大化を行うことが次世代B2B業務改革であると考えます。
大手調査会社によると、今後2025年までに世界で最も成長している企業の約8割近くがRevOpsを導入予定というレポート結果があり、今後世界的にRevOpsの導入が拡大することは間違いないとも言えます。
RevOps導入のメリット
前章でRevOps導入効果の一部をご紹介しましたが、RevOps導入によるデータドリブンのアプローチで期待される効果は以下の通りです。
- レベニュー最大化:各組織が連携することで売上、利益を最大化
- CX最大化:各組織が、顧客にどのような体験を提供すべきかを共通認識化することで、顧客体験価値を最大化
- コスト削減:各組織が連携することによるコスト削減
- 意思決定の改善:データと分析に基づいて、企業のより良い意思決定を促進
これらの効果により、企業としてレベニュー・CX最大化に向けた課題解決の実行体制が整備される事になります。
RevOps導入のアプローチ
RevOps導入を成功させるためには導入アプローチを工夫する必要があります。何故なら、導入が適切でないと既存の組織から新業務や新体制に対し反発が起こり、導入されたとしても活用されないことが想定されるためです。そのため、RevOpsの導入計画から定着化までの構想策定を行い、レベニュー・CXの向上が見えるまで従業員やステークホルダーとコミュニケーションを行い、RevOpsを効果的かつ機能的にするまで粘り強く取り組む必要があります。以下にRevOps導入アプローチ例を示します。
(1)CX・レベニュー戦略における在るべき姿の策定
- 「ターゲット顧客」とその顧客に対する「在るべき顧客体験」を定義する。
- レベニューモデル(収益を最大化する業務体系)とそのKPI・インセンティブなどを定義する。
(2)現行業務の把握
- マーケティングやセールス・カスタマーサクセス・IT担当者の現行業務と課題を把握する。
(3)IT導入・連携
- 顧客プラットフォームのデータを基に業務を支援し、示唆が得られるITツール(SETやCXMなど)を導入する。
(4)データ統合
- 必要なデータとそのデータの収集方法などを定義する。
- 分析ユースケースが定義され、それに基づく分析結果が汎用的な形式(レポート、ダッシュボードなど)で出力されるようにする。
(5)RevOps体制の構築
- 全社レベニュー責任者(CROなど)を配置する。
- 全社レベニュー責任者の配下に、全組織横断の専門チーム(RevOps組織)を構築する。
(6)RevOps人財の育成
- 営業力強化・組織機能の有効化の為の、人財育成(人財要件定義~データドリブン人財の教育など)とナレッジ活用の推進機能を整備する。
(7)意識変革を含めた組織変革の推進とRevOps組織の有効化
- マネジメント層から関係者に対しRevOps組織の目標や進捗状況を定期的に共有するなど、変革の意義とメリットを社内に明確に伝える。
- 定着化計画を立て、RevOpsと既存組織の連携が効果的かつ機能的であることまで確認する。
また、取り組むべきタイミングとして、RevOpsの導入が遅れることで機会損失に繋がるリスクがあるため、早期の導入検討を推奨します。RevOps導入アプローチに基づくことで、早期かつコストを抑えた導入に貢献する事ができます。
おわりに:RevOpsを導入するにあたって
RevOpsの導入は、多くの組織が横断で共通認識を持って推進していくことが重要となります。
大きな企業であればあるほど導入するには、RevOps導入にノウハウを持つコンサルタントの協力が必要になるでしょう。また、大きな企業であればあるほど、指標の値や顧客数が大きくなるためRevOpsの費用対効果はより高くなることが予想されます。NTTデータ デザイン&テクノロジーコンサルティング事業本部とクニエは、共同開発した“成熟度アセスメントツール”を活用したRevOpsの導入ノウハウを保持しています。このツールの活用等により、企業のCX・レベニュー戦略の在るべき姿と取り組むべき施策を明確化し、The Modelの分業化による問題点を抱える企業や、RevOps導入に悩む企業に対して課題解決支援を行っています。
図3:成熟度アセスメントツールを活用したRevOps導入提案資料
[以上、ビジネスコミュニケーション 2023年7月号より一部改変]
デジタルサクセスの詳細はこちら:
https://enterprise-aiiot.nttdata.com/service/digital_success
Salesforce(セールスフォース)の詳細はこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/salesforce/
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