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2023.11.13技術トレンド/展望

メタバースのビジネス活用の可能性

メタバースという技術トレンドは幻滅期に突入したと言われはじめて早数カ月が経った。しかしながら、VRやARデバイスは次々に新しいものが市場に投入され、ユースケースも少しずつ登場しており、日常生活で当たり前のものとして受け入れられる日が近づいてきているといえるだろう。
一方で、VR/ARデバイスはまだまだ高価であるため一般市場向けへの普及は少し先になり、ビジネスユースケースでの普及が先行すると考えられる。本稿では、メタバースのビジネス活用について考察する。
目次

1.メタバースの現状

「メタバースは『幻滅期』に入った」と言われはじめて早数カ月が経ちました。2023年8月に公開されたGartner®の「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」においてもメタバースは幻滅期に位置づけされています(※1)
しかしながら、「それでもメタバースがやってくる三つの理由」でも述べられている通り、デバイスの進化は着実に進んでおり、新たなコンピューティングの主役となる未来は近づいてきているでしょう。さらに、キラーユースケースも登場しつつあります。ただし、より没入感のある体験を実現するためのデバイスはまだまだ高価であることから、コンシューマー向けではなくビジネスユースでのメタバースの活用が、まずは進むでしょう。
そこでNTT DATAでは企業のビジネス変革(DXも含む)の起爆剤として、メタバースのビジネス活用の可能性を探っています。
本稿では、メタバースのビジネス活用における効果と、そこから考えられるユースケースの例について解説します。

(※1)

Gartner®、プレスリリース、Gartner、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」を発表、 https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20230817
GARTNERおよびHYPE CYCLEは、Gartner Inc.または関連会社の米国およびその他の国における登録商標およびサービスマークであり、同社の許可に基づいて使用しています。All rights reserved.
Gartnerは、Gartnerリサーチの発行物に掲載された特定のベンダー、製品またはサービスを推奨するものではありません。また、最高のレーティング又はその他の評価を得たベンダーのみを選択するようにテクノロジーユーザーに助言するものではありません。Gartnerリサーチの発行物は、Gartnerリサーチの見解を表したものであり、事実を表現したものではありません。Gartnerは、明示または黙示を問わず、本リサーチの商品性や特定目的への適合性を含め、一切の責任を負うものではありません。

2.ビジネス変革をもたらすメタバースの効果

メタバースがビジネスにもたらす効果についての市場調査(※2)結果より、ビジネスに対するメタバースに期待する効果は以下の2つに大別できます。

(1)制約からの解放

実空間では実現できない事象や物質の再現、さらにはそれらを用いたシミュレーションなど、今までには無い発想によりビジネスを別のステージへといざなう可能性を秘めている。

(2)新たな体験の実現

『制約からの解放』の延長線とも考えられるが、実空間では体験できない新たな体験の創造や実空間では把握しにくい行動の把握、より没入感の高い疑似体験など、メタバースならではの体験を創造することで、利用者に対する新たな価値を提供できるようになる。

これらの効果を意識しながら、お客さまのビジネスにメタバースを掛け合わせることで、お客さまのビジネス変革を実現できるでしょう。

(※2)

日経BP社『メタバース事業・構築戦略[調査編]第4章 企業と個人に聞くメタバース意向調査』

3.メタバースのビジネス活用例

NTT DATAは、上述のようなメタバースの効果を踏まえ、メタバースを活用したビジネス変革について、3つの変革の分類ごとにユースケースを検討しています。

表1:変革の分類ごとのメタバースのユースケース例

変革の分類 効果 ユースケースの例
エンプロイーエクスペリエンス(EX)の変革 制約の解放
+新たな体験の実現
バーチャルワークプレイス、バーチャルトレーニング
カスタマーエクスペリエンス(CX)の変革 制約の解放
+新たな体験の実現
バーチャル観光、バーチャルコマース、バーチャルイベント、バーチャルヘルスケア
バリューチェーン(VC)の変革 制約の解放 スマートファクトリー、スマートシティー、マーケティング高度化、シミュレーション

上記のユースケースの例から具体的な活用例を2つ紹介します。

例(1)メタバースを活用した安全体感トレーニング(EX変革:バーチャルトレーニング)

現場における危険作業や事故再現、トラブル対応などのトレーニングコンテンツをメタバース空間上で実現することで、物理空間上の制約を突破したトレーニングを実現します。

表2:安全体感トレーニングにおけるメタバースならではの価値

価値 期待される効果
自由な空間設計
  • 危険な状態の空間を再現
  • シチュエーションをランダムに生成
  • 具体的な危険体験による安全意識の向上
  • ランダムなシチュエーション生成による対応力の向上
  • 技術継承による人材不足の解消
  • 物理施設の制約からの解放による学習効率の向上
  • 対外PRによる顧客ロイヤリティの向上
  • 同業他社および近隣業界向けに利用拡大することでの社会貢献
  • 同業他社への外販による収益
現実ではできないユニークな体験の提供
  • 危険の疑似体験
  • 過去にあった事故の追体験
  • シチュエーションをランダムに生成することによるさまざまなケースでの学習
  • ボリュメトリックを使った熟練者の作業をさまざまな方向から見られる
  • 複数人同時並行でのトレーニングの実施
現実ではできない高度な振り返り
  • ログにより後から状況を再現し振り返ることができる
  • トレーニング時の映像をさまざまな角度から見返すことができる

例(2)メタバースを活用した新商品発表会(CX変革:バーチャルイベント)

新商品を発表する際にメタバースを活用することで、マーケティングの観点で大きく価値を創出できると考えています。

表3:新商品発表会におけるメタバースならではの価値

価値 期待される効果
距離や時間の超越
  • 普段行けないような遠方からでも参加可能
  • 会場を24時間開くことが可能
  • 企業活動の理解へつなげることで企業ロイヤリティーの向上
  • 先進企業として採用活動における求職者へのPR
  • キャリア教育における職業理解度の向上
  • 営業/広告タッチポイントの増加
  • 見学自体のサービス化による収益
現実ではできないユニークな体験の提供
  • 発売前製品をより近くで見ることが可能
  • エフェクトなどを活用した演出
現実では取得できないユーザー情報の取得
  • 参加者の行動/操作ログの取得(視線、行動、操作 etc.)

さらに近年、触覚フィードバックのあるVRグローブなど周辺技術の開発も加速しています。トレーニングの用途では、反発やさわり心地などの再現により、より高度なトレーニングへつなげることができます。新商品発表会の用途では、製品のさわり心地や形を感じることも可能になり、より製品の解像度が上がることになるでしょう。
メタバースで扱う視覚や聴覚に加えて、それ以外の五感へもアプローチすることで、さらに一歩進んだ新たな体験を実現することができるようになると確信しています。

4.まとめ

本稿では、メタバースによるビジネス変革の可能性について考察しました。NTT DATAは、お客さまのビジネス変革に向けて、上記で紹介した以外にもEX、CXおよびVCの観点でさまざまなビジネスユースケースを検討し、実現に向けたコンサルティングや要素技術の整備などを実施しています。具体的には、「メタバースが持つ潜在的価値を伝えるための勉強会コンテンツ」、「アイデア創出のためのワークショップ」、「アイデアの価値探索をするためのKPIガイドラインと取得すべきログの定義」、「PoCを高速に進める技術アセットの整備」です。

また、本稿では2つの活用例についてそれぞれ「メタバースならではの価値」を紹介しました。この「価値」を検証するために必要なログをどう取得するか、は今後必ず課題になってくると考えています。現在、さまざまなメタバースプラットフォームが出てきていますが、価値検証に必要なログが取得できるかが「プラットフォームを利用する」のか「独自の空間を作るのか」の判断基準の一つになるからです。

NTT DATAは、メタバースを使い、エンドユーザーも含むお客さまの新たな体験を、お客さまとともに創造していきます。

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