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2025.1.17事例

デジタル“化”ではなく、デジタル“変革”(DX)をめざす
三菱UFJ銀行市場部門の中期経営計画策定にNTTデータが伴走

従来より、業務のデジタル化を進めてきた三菱UFJ銀行の市場部門。従来のデジタル化の枠を超えて組織全体の変革を推進するために、2024~2026年度の新中期経営計画ではDX戦略をいっそう強化し、取り組みを加速させている。この新中期経営計画におけるDX戦略の策定はNTTデータとともに行った。めざす姿と、その実現のためのロードマップを両社でどう描いたのか。経営層はもちろん、現場も巻き込んでつくりあげた過程や、初年度の取り組み状況を三菱UFJ銀行、NTTデータに聞いた。
目次

DXを推進し、組織変革を実現するために

三菱UFJ銀行の市場部門は、金利(債券)・為替・株式などの金融商品をお客さまに提供するセールス業務、銀行間取引や取引所などで市場性商品の売買を行うトレーディング業務、銀行全体の資産・負債や各種リスクを総合的に運営管理するトレジャリー業務を主に担っている部門だ。
三菱UFJ銀行全体の中期経営計画に基づき、市場部門でも3カ年ごとに中期経営計画を策定している。2021~2023年度の前中期経営計画では、部門内にデジタル推進チームを設置してデジタル化の取り組みを本格化。部門内の各領域で、行員から発案されたデジタル活用アイデアを検証しながら推進してきたという。

当時の取り組みについて、三菱UFJ銀行市場部門の南 達也 氏は次のように語る。

三菱UFJ銀行 市場企画部市場 エンジニアリング室 南 達也 氏

三菱UFJ銀行
市場企画部市場
エンジニアリング室
南 達也 氏

「これまで特に力を入れて取り組んだのはデジタル化の領域でした。例えば伝統的な為替取引では、お客さまは電話で銀行のセールス担当者に発注し、セールス担当者はお客さまからヒアリングした内容を直接エクセルに打ち込んで、印刷したシートをトレーダーに渡す、といったアナログな業務が多く残っていました。その一連のプロセスに対して抜本的にデジタル化を進め、2023年度時点では一部の領域を除いて、お客さまはセールス担当者を直接介さずシステムに直接注文し、システムが自動的に処理を行うフローを実現しました」(南 氏)

2023年度までの取り組みにより、既存業務のデジタル化としては一定の成果は得たものの、組織全体の変革(DX)には至っていなかった。そこで2024年度からの新中期経営計画では、市場部門全体で早期にDXを推進する状態をつくることが重要であると考えたという。

「各領域でデジタル化を進めていたため、個別最適になってしまっていたり、同じような取り組みを別々の部署で行っていたりしていたこともありました。本来DXとは個別の取り組みを1つの線につなげて変革すること。それを実現するためにはさらに一歩進んだ施策を検討しなければならないと考えました」(南 氏)

「めざす姿」を描き、ロードマップを策定。実行フェーズでも伴走

DX推進を強化した新中期経営計画を策定するにあたり、「漠然とした課題感はあったものの、具体的にどのように取り組めばいいのか、とても困っている状態だった」と南 氏は語る。複数の企業に相談したところ、NTTデータからの提案を受け、可能性を感じたという。

「個別のソリューションを導入するだけでは当行の課題は解決できないと考えていたときに、NTTデータから『組織体系から大きく変えたほうがいい』といわれ、非常に納得感がありました。デジタル変革を通してめざす事業の姿、それをデジタル活用で実現する方向性、ロードマップなどを体系的にご提案いただいたことで具体的なイメージを持つことができたのです。役員層に説明するうえでも大きな後ろ盾になりました」(南 氏)

NTTデータは市場部門とともに、デジタル変革を通じて実現したい姿やデジタル活用案を具体化したうえで、「めざす姿」と「課題」の解像度を上げる3カ年での変革ロードマップを策定した。支援に携わったNTTデータのコンサルタント、加藤 元英は次のように振り返った。

NTTデータ デジタルサクセスコンサルティング事業部 加藤 元英

NTTデータ
デジタルサクセスコンサルティング事業部
加藤 元英

「デジタル変革により成功した状態『デジタルサクセス』を実現するためには、『ビジネス』『人材・組織』『IT・Tech』『データ・アナリティクス』の4つをバランスよく成熟させていくことが重要です。そして、3年先の実現したい姿から逆算して戦略を組み立てることが必要です。一方、中長期の視点だけでなく、直近の次の期から何に取り組んでいくかという具体的な計画も進めていかなければなりません。今回はこうしたロードマップや戦略を当社から何度も仮説を提示し議論しながら策定し、策定後の具体的な施策の実行支援まで一気通貫で行っています」(加藤)

NTTデータとともにつくりあげたロードマップに関して南 氏は、「組織変革を進めるにあたってはどうしても早期の成果を求められがちですが、今の時期に何を検討するべきかが筋道立てて整理されているので、焦らず着実に推進することができています」と評価する。

現場の声から課題を整理。NTTデータとともにつくりあげた新中計

では、新中期経営計画策定において、両社は具体的にどのように検討を進めていったのか。NTTデータではこれまで培ってきたデジタルサクセス実現におけるノウハウを集約した「デジタルサクセスプログラム」をベースにしつつ、三菱UFJ銀行の業務や課題にあわせてカスタマイズしながらロードマップを策定。そのためにまず取り組んだのが、現場の課題をキャッチアップすることだった。南 氏は次のように語る。

「新中期経営計画策定後、実現に向けて実際にDXに取り組むのは現場のメンバーです。そのため計画策定段階から現場の課題やニーズを取り込みともに検討することが重要だと考えました。そこで、異なる領域のメンバーを集め、現場メンバーとIT・テクノロジーに詳しいメンバーが一体となったワーキンググループを立ち上げ、約3カ月の初期検討期間を設けました。デジタル変革による将来像の具体化、課題やテーマの抽出・整理・評価を進めるにあたっては、知見・実績が豊富なNTTデータにも参画していただきました」(南 氏)

加藤とともに支援に携わったNTTデータのコンサルタント 岡田 健翔は、ワーキンググループの立ち上げについて、「人事・組織、IT・テクノロジー、データなど、テーマごとにNTTデータのコンサルタントをアサインし、『どのようなグループをつくればいいか』『どんな手順で進めればいいか』などを検討することから始めました」と語る。

NTTデータ デジタルサクセスコンサルティング事業部 岡田 健翔

NTTデータ
デジタルサクセスコンサルティング事業部
岡田 健翔

ワーキンググループでは現場のメンバーから100以上の課題が寄せられた。これをどのように経営方針と合致させながら市場部門としての課題、戦略に落とし込むか。NTTデータでは集まった課題の構造化や評価を行い、優先順位をつけて検討論点を提示した。

「具体的な戦略に落とし込むまでの助走期間に現場メンバーやNTTデータとともに白熱した議論ができたのはよかったです。定期的なミーティングやワークショップを通じて、私たちの意見や要望をしっかりとヒアリングしていただき、それを反映した提案を迅速・高頻度に行っていただけた点が非常に助かりました。同じ目標に向かうパートナーとして、大変心強かったです」(南 氏)

新中期経営計画策定後、業務に関する個別の課題の対応は南 氏を中心とした三菱UFJ銀行のチームが対応。人材育成領域における課題構造化やTo-Be検討、具体的な人材育成施策、KPI設定などはNTTデータが引き続き伴走している。

南 氏はNTTデータとともにつくりあげた新中期経営計画について次のように振り返った。

「NTTデータのコンサルタントの皆さんは市場部門におけるビジネス特有の難しさも理解したうえで、単なるソリューション導入ではなく、当行の方針と照らしあわせ、私たちのニーズに最適化した提案をしてくれました。これによって、より実践的で効果的な新中期経営計画を策定することができました」(南 氏)

業務を通してスキルを身につける。DX人材の育成支援も

今回NTTデータとともに策定した2024~2026年度の新中期経営計画では、「市場部門におけるデータドリブン経営の実現」をスローガンに掲げ、(1)データを駆使したビジネス施策の本格化とデジタルを活用したビジネス変革の実現、(2)システムアーキテクチャ再構築により複雑化・サイロ化したシステム構造の解消、(3)DXを加速させるための組織体制の整備と人材育成による実践力底上げ、を主要戦略骨子として掲げている。

「具体的なDX戦略として掲げたのは3つ。まず、抜本的なデータの利活用を推進し、マーケティングDXを進めていくこと。2つ目は、BIツールを活用してデータを可視化する取り組みを推進すること。そして3つ目が、従業員全体でAIやデジタルのリテラシーを高めること。このように領域横断でアジリティを高めていく施策を新中期経営計画に盛り込み、現在推進しています」(南 氏)

また、市場部門全体でのDX変革を加速するための土台づくりにも力を入れている。現場メンバーと連携してDXを検討・実現し、人材育成やアーキテクチャを最適化する必要性があることから、新たに部門全体の組織の再整備にも着手した。

今後は新中期経営計画のロードマップに沿って施策を一つひとつ実行するとともに、引き続きNTTデータのサポートを受けながら人材育成にも力を入れていくという。

人材育成の重点施策として2024年度から新たにスタートしたのが、OJT型の育成施策「デジタルブートキャンプ」だ。これまでも各自が知識やBIツールを習得するプログラムはあったが、南 氏は「使い方を学ぶだけではめざすDX人材を育成できないという課題がありました」と語る。

そこで組織のDX推進力強化を目的にスタートしたのが、各組織でデジタル活用を啓発、牽引できる中核人材の育成をめざす「デジタルブートキャンプ」だ。3カ月で「課題設定~テクノロジーの活用・実装」をOJT形式で実践し、スキルを身につけてもらう取り組みで、NTTデータから講師を派遣し、年間40名の中核人材の育成をめざしていく。このプログラムの大きな特徴は、「やりたいことに対してツールを選ぶ」という点だ。岡田は次のように話す。

「デジタル活用の中核人材育成で大事なのは、自分の業務を通して実践的に活用しながら、自己研鑽に取り組むことができる学習だと考えました。そこで、単にツールの使い方を学ぶプログラムではなく、自分の業務でやりたいことや改善したいことを持ち寄ってもらい、最適なツールを選んでソリューションを実際につくってもらうというプログラムをつくりました」(岡田)

デジタルブートキャンプは社内でも好評で、今後はほかの部門でも実施し、全社に広めていくことを検討しているという。南 氏も手応えを実感しているようだ。

「デジタルブートキャンプを通じて、個々の業務を現場主体で変革していってほしいと期待しています。そのためには、部門全体としてDXを実行できる人材規模を増やしていくことが重要です。今後は研修を受けた方が中心となって各組織で人材の育成を進め、組織そのもののDX力強化につなげていきたいと考えています」(南 氏)

組織を変革し、新しいビジネスを生み出す支援をしていく

新中期経営計画最終年度まで、NTTデータも引き続き伴走していく見込みだ。

「今後、特にデータの利活用に注力していきたいと考えています。データを活用することで組織全体のデジタルリテラシーが向上し、より迅速かつ柔軟な対応が可能になることをめざしています。データ分析プラットフォームの導入や、データサイエンティストの育成を進めることで、データドリブンな意思決定の実現をめざしていきます」(南 氏)

また、南 氏は「中期経営計画の策定は3年ごとですが、3年経つと新しい技術やスキルが登場します。特に近年の生成AIの広まりには驚きます」と語ったうえで、NTTデータに対する期待を次のように述べた。

「NTTデータが持っている最先端のテクノロジーについても知見をもとにした情報提供や活用提案に期待しています。また、引き続き新中期経営計画の実現に向けた伴走、特に人材育成や組織力強化に関する手助けをしていただきたいです」(南 氏)

NTTデータの加藤は、「組織変革によって、最終的にはNTTデータがいなくてもデジタルサクセスの状態が維持できるのが理想」だと語る。

「現在、共同で取り組んでいる人材育成施策に加え、今後も三菱UFJ銀行 市場部門様の組織力向上や業務高度化の力になりたいと考えています。また、最新テクノロジーを活用した変革にも貢献していく所存です。最終的には、NTTデータがほとんどいなくてもデジタルサクセスの状態が維持/拡大できるのが理想です。我々はその中で、最新テクノロジーや他業界の知見など、より専門的な部分でご支援していきます。」(加藤)

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