生成AIの活用は「局所的な業務改善」から「抜本的な業務変革」にシフト
生成AIを活用した対話型アプリケーションや社内文書検索アプリケーションは、いまや多くの企業に浸透し、一般的なものとなっています。現在の生成AIの利用方法としては、対話型アプリケーションを通じて生成AIに指示や情報を与え、一問一答形式で応答を得るスタイルが主流です。この方法では入力と応答を繰り返すことで最終的な目標を達成することは可能ですが、そこに至るまでには人が多くの情報をインプットしなければならず、業務改善効果は限定的です。
しかし、足元ではAIエージェント技術の進化により、一度の指示でAIエージェントが自律的に一連の作業計画を立て実行したり、より複雑な作業に対応したりできるようになってきました。これにより、企業が提供するサービスや活動において、企業価値向上を実現しうるレベルの業務変革が期待されます。
業務変革を実現する技術が実用化段階に入ってきた今、企業は自社の業務やサービスに生成AIをどのように適用するかを継続的に検討することが求められています。そのような検討の支援活動として、我々デジタルテクノロジーディレクター®(※1)は、生成AIのビジネス適用をお客さまと一緒に考える「生成AI共創ワークショップ」を提供しています。以下では、我々がワークショップで活用しているノウハウの中から、生成AIの適用ポイントを見出すための着眼点を紹介します。
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/digital_technology_director/
生成AIの適用ポイントを探るための着眼点
三つの着眼点を紹介します。
1.能力を理解する
生成AIは、入力と出力をもつ一種の「関数」です。生成AIが受け取るデータのタイプ(テキスト、画像などの「モーダル」)、得意とする処理のパターン(分類、抽出、変換など)、出力するデータのタイプを理解し、生成AIにできることをパターンとして把握します。
2.使いどころを見出す
ユーザーの行動や思考のプロセスを複数のステップに分解し、各ステップ間でどのような情報がやり取りされているかを明らかにします。それにより、生成AIが適用できるポイントが見えてきます。
例として、自由記述式のアンケート調査の回答を分析する作業を分解してみます。アンケート分析では、まず回答内容の全体に目を通した上で、適切な分類項目を設計し、その分類項目に従って回答内容を改めて分類します。このプロセスには、「抽出」と「分類」というtext-to-textの関数が含まれており、生成AIが適用できるポイントといえます。

図1:生成AIを活用した自由記述式アンケートの分析の一例
3.データ資産を活用する
自社が保有するデータを活用することで独自性を出します。
例えば、顧客の属性や嗜好に関する情報を生成AIに入力することで、特定の顧客向けにパーソナライズされた提案を生成するといった活用が考えられます。
前述のアンケート分析の効率化は、ChatGPTのような対話型生成AIアプリケーションでも実現できる局所的な業務改善ですが、より広範囲におよぶ一連の企業活動や業務プロセス内でも生成AIが適用できるタスクを複数見出し、ユーザーがフリクションレスに実行できるUI/UXを設けることで、抜本的なカスタマーエクスペリエンスの向上や業務改革に繋がっていきます。
例えば、当社が東京ガスと開発した「マーケティング施策用アプリ」(※2)では、マーケティング担当者が行う「ターゲットの設定」「ペルソナ・カスタマージャーニー設定」「施策立案」という各タスクに生成AIを適用するだけでなく、タスク間の情報の受け渡しを可能とするUXを具備することで、局所的な業務改善に留まらない業務変革を実現しています。また、この例ではWebアプリケーションの画面遷移でフリクションレスなUXを実現していますが、AIエージェントがユーザーの代わりにタスクをこなすという形もフリクションレスなUXの例と言えます。
デジタルテクノロジーディレクター®が進める生成AI共創ワークショップ
デジタルテクノロジーディレクター®は、生成AIを活用したビジネスのあるべき姿をお客さまと一緒に考える「生成AI共創ワークショップ」を提供しています。ワークショップでは、お客さまが提供するサービスのカスタマージャーニーやそれを支えるバリューチェーンの棚卸しをして、その中から生成AIを適用できそうなポイントを探します。そして、NTTデータが持つ技術的な知見を活かして、実現可能性の高い生成AIの活用ユースケースを抽出します。

図2:ワークショップの様子
当社内の事例になりますが、これまでのワークショップでは、ITシステムの運用におけるシステム障害発生時の初動対応のほとんどを、生成AIによるAIエージェントに代行させるユースケースを創出し、現在実装を進めています。最近の技術検証では、約50%の時間短縮効果を確認しており、成果が出始めています。
NTTデータは、生成AI共創ワークショップなどの活動を通じて真に価値のあるユースケースの創出を支援し、さらにその先の実装、成果創出をまでをエンドツーエンドで支援することで、お客さまの変革を実現します。
生成AI(Generative AI)についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/generative-ai/
デジタルテクノロジーディレクター®についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/digital_technology_director/
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