サステナブルプロダクトが抱える共通課題
前回はエネルギーの非化石化について解説を行った。今回は環境負荷の低い製品(サステナブルプロダクト)の共通的な課題と解決策について解説を行う。サステナブルプロダクトは機能、性能面で既存製品と同等のため、代替製品だが、成熟した既存製品と比較して価格の高さが共通の課題である。例えば、非化石燃料由来の航空燃料(SAF)は従来製品に比べ、実売価格は2倍から4倍の価格差がある。このコスト増は燃料ユーザーに大きな負担となる一方、環境保全には有効で活用が要求されるジレンマを抱えている。環境保全の主たる受益者は生活者である。価格転嫁すべきであるが、既存製品が混在した環境下では簡単に実行できない。この課題の解決に向け、温室効果ガス(GHG)排出量削減効果等を計測、経済価値へ変換、取引を行うことで、公的機関の補助も含めた、幅広いコスト負担を実現しジレンマの解消を目指す活動が進んでいる。
環境価値取引の実例と課題
例として航空機産業のCORSIAを紹介する。CORSIAは国際民間航空機関(ICAO)が2020年以降のGHG排出量の増加制限等の短期目標を達成するため、2016年に経済手法の導入を対象に制度化され、現在128か国が参加する枠組みである。CORSIAの中で活用が進むSAFの例を紹介する。SAFは約60%から80%のCO2削減効果があるが、活用には承認済みの認証スキームであるISCCとRSBが認定するCORSIA適格燃料の利用が必要である。この認定では、GHG削減量算定モデルやトレーサビリティ管理手法等が規定されており、証明性と透明性を持った環境価値の算定を義務付けている。算定した環境価値はScope1やScope3での活用が可能となる。カーボンクレジットはボランタリークレジットが主流だが、創出方法が多岐に渡ることから、2020年の欧州委員会の調査では53.3%の企業の環境に対する主張が曖昧であると指摘しており、環境価値取引においては、証明性と透明性の確保が課題となる。2023年2月には欧州委員会にてグリーンウォッシング(実質を伴わない環境訴求)を禁止する指令案であるグリーンクレーム指令が採択され、法的にも対応が求められる環境下に移行しており、承認済みの認証スキームの活用の重要性が増している。次回はライフサイクルアセスメントでの環境評価や製品の識別において基礎となるトラストについて解説を行う。

図:SAFの環境価値取引の概念図
本記事の詳細を以下のアーカイブ動画で解説しています
https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/event/archive/2025/011/
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