非化石エネルギーの必要性と重要性
前回はサーキュラーエコノミーと工場や都市の「スマート化」について紹介した。今回は、資源循環と密接に関係するエネルギーの非化石化について考える。エネルギーの非化石化は、脱炭素や環境保全、エネルギー安全保障の観点からも極めて重要な課題である。現状では、人間の活動が地球に与える負荷(エコロジカルフットプリント)は、地球が供給可能な再生可能資源と廃棄物吸収能力(バイオキャパシティー)を大幅に上回っており、持続可能性が危機に瀕している。この課題への解決策として注目されているのが、バイオ燃料や合成燃料の利用である。バイオ燃料は既存の内燃機関やインフラを活用でき、移行が容易である上に、廃棄物を原料とすることで資源循環に寄与する。一方、合成燃料はグリーン水素とCCUS(炭素回収・再利用技術)を活用し、カーボンニュートラルな燃料供給を可能にする。特に航空や海運など、脱炭素化が困難な分野での利用が期待されている。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、2050年までにバイオ燃料が輸送部門のエネルギー供給の20%以上を占めると予測しており、環境負荷の軽減だけでなく、新たな産業や雇用の創出が期待されている。
エネルギーの非化石化を実現するための仕組み
バイオ燃料や合成燃料の商用化促進と普及の鍵となるのが、データ流通基盤とカーボンクレジット取引である。商用化を進めるには、ISCC(国際持続可能性および炭素認証)やRSB(持続可能なバイオマス基準)に代表される、持続可能性認証の取得が不可欠である。これらは資源の調達から最終利用までのトレーサビリティー確保を求めている。例えば、バイオ燃料では、原料調達から最終利用に至るまでの温室効果ガス(GHG)排出量を定量的に評価し、その結果を信頼性のある形で示す必要がある。このプロセスを支えるのがデータ流通基盤である。データ流通基盤は、バリューチェーン全体の透明性と一貫性を保証し、ライフサイクル全体での削減効果を可視化する仕組みを提供する。また、カーボンクレジット取引は、GHG削減量を市場で売買可能なクレジットとして転換し、収益化する重要な仕組みである。これにはデータの正確性と透明性が欠かせず、データ流通基盤がクレジット取引の信頼性を支える役割を果たす。こうした仕組みにより、非化石エネルギーの普及と進展が加速すると考えられる。次回は、環境価値を経済価値に転換する方法について解説する。
図:非化石エネルギーの生産・利用と環境価値取り引き
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