社会課題×ビジネスは次のステージへ
気鋭の若手起業家とNTTデータが挑む未来
NTTデータが2024年1月26日に開催した「NTT DATA Foresight Day 2024」にて、NTTデータ代表取締役社長・佐々木裕と、社会課題の解決を目指すtaliki代表取締役CEO・中村多伽のトークセッションが行われた。
大企業の代表と気鋭の若き起業家が、より良い社会を実現させる道筋を語り合う。
Forbes JAPAN BrandVoice 2024年 3月 25日掲載記事より転載
「これまで、社会課題の解決はビジネスにならない、という印象がもたれてきた」。NTTデータの代表取締役社長の佐々木裕(写真右。以下、佐々木)はイベントの冒頭でこう話した。
しかし、中村多伽(写真左。以下、中村)が代表を務めるtalikiの事業はその考えをくつがえす可能性を秘めている──。「事業を通じた社会課題解決」を掲げるNTTデータ。一方で社会起業家のインキュベーションや社会課題解決へのファンド事業を実践するtaliki。「ひらけ、未来。~社会課題解決への情熱と変革への胎動~」と題したセッションでは、志を同じくする二人が、社会起業とソリューションビジネスの未来を語り合った。
社会課題はビジネスになりにくいのか
佐々木
中村さんは2017年、22歳でtalikiを創業。「社会課題を解決する人をエンパワーする」をミッションに、社会起業家の育成やインパクト投資、販路拡大・営業支援、啓蒙事業などを行っています。
「社会課題の解決」をどうやってビジネスとして成立させているのでしょうか。
中村
talikiではこれまで300以上の社会起業家の事業立ち上げ・拡大を支援してきました。
ただ、最初にしたことは、「そもそも社会起業家とは何か」を定義することからだったんです。
佐々木 社会起業家の定義、ですか。
中村
はい。私たちの最重要目標は社会課題の解決ですが、売り上げや利益も同じぐらい重要だと考えています。
社会課題とは、技術発展や資本主義といった全体最適を求めてきた社会における“ゆがみ”であり、気候変動や貧困といった課題は、このゆがみによって引き起こされたもの。
行政やNPOだけでは、プレイヤーが足りないというのが現状です。課題に取り組む人を増やし、リソースを増やすことで、社会課題解決がいつでもなされる仕組みをつくるのが私たちの理想です。
佐々木 社会のゆがみというのは、まさにビジネスになりにくいところかと思いますが、成立しているものには、どんな特徴があるのでしょうか?
中村
ヘルスケアや脱炭素のテーマは客単価も、市場成長率も高い、いわゆる「もうかりやすい領域」ですね。
その一方で貧困、障がいなどにかかわるテーマでの起業は、投資した本人が直接的なリターンを受けづらいため、成長が難しい分野といえるでしょう。
佐々木
私たちも社会課題解決にむけて、さまざまな取り組みをしています。
例えば、ドローンインフラの整備を通じた防災や労働力不足の解消、あるいは脱炭素化に向けた、企業の温室効果ガスの排出量を可視化するソリューションの提供などの取り組みです。単独ではなく、各領域で事業を展開しているお客様と一緒に、将来のあるべき姿を描きながら取り組んでいます。
そして、talikiのようなスタートアップが活躍しやすい環境を整えることもNTTデータの使命だと思っています。
中村
創業から6年たって、もともとはビジネスになりにくかったものも、少しずつ事業化できる実例が増えてきていると思います。
talikiが支援した3つの企業を例にお話ししますと、環境負荷の低い農業の支援に取り組む「坂ノ途中」、重度障がい児のリハビリにデジタルアートなどのテクノロジーを活用する「デジリハ」、介護ワーカーのマッチング「スケッター」を運営する「プラスロボ」がそうです。その一方で、スピーディに事業化できない分野においてはまだ課題が山積しています。
佐々木
そういったビジネスとして成立しにくい分野に対して、私たちNTTデータはテクノロジーの提供を通して多岐にわたる領域の事業とかかわりを提案、創出しています。
考えてみれば、スマートフォンの登場は世界中の人の生き方や消費行動を変えました。また、クルマの自動運転によって高齢者が安全に運転できるようになる未来が訪れるかもしれません。
テクノロジーが社会のより良い変化に貢献できることはまだたくさんあるはず。
弊社もソーシャルデザイン推進室を立ち上げ、テクノロジーの強みを生かし、さまざまなプレイヤーを巻き込みながら社会課題に取り組んでいます。
中村 心強い言葉ですね。新しいサービスや事業の創出にトライし続けなければと、あらためて思います。
ミッシングピースを見つけ出す
佐々木
ところで私たちの年齢は、およそ30歳差なんですよね。
中村さんは昨年、30代以下の注目の起業家としてForbes JAPAN 30 UNDER 30に選出されました。中村さんから見て、日本の未来はどのように展望されるものなんでしょうか?
中村 いわゆる「Z世代」と呼ばれる私たち若い世代は、日本のGDPの低迷期しか経験していません。そのため、物質的な豊かさよりも精神的な豊かさを求めているのではないでしょうか。
佐々木
面白いですね。
こうした豊かさへの視点を変えることが、日本のビジネスに新しい価値観を生み出す土壌になっている。
私は、今の日本は「課題先進国」だと思っています。だからこそ社会起業のように、解決方法をビジネスとして編み出すことは日本の得意分野になりうるし、将来ほかの国が同じ課題に直面したときに、輸出するチャンスも生まれます。そのためにも今、技術的なノウハウやデータを蓄積していくことが大事ですね。
NTTデータが多くの顧客と積み上げてきた豊富な知見やアセットを活用していく時代がやってきたと考えています。
中村
そうですね。東南アジアでは社会課題解決型のビジネスが非常に伸びています。
日本では今ひとつ伸びにくい分野でも解決方法を提示できれば、大きなビジネスになる可能性があると思います。
佐々木
新たなビジネスやサービスを提案するうえで必要なのはForesight(先見性)です。
NTTデータでは、ビジネスとテクノロジー、両方の視点から社会の変化を読み解き、このミッシングピースを見つけ出すことが、豊かで調和の取れた社会を実現するためには不可欠。我々は社会変革プロデューサーとして、この動きを先導していきたい。
大きな企業がもつ影響力と、若手の起業家やベンチャーがボトムアップで社会を変えようとする力。
一人ひとりが起こす小さなうねりが、いずれ共鳴して大きくなる。
今回のセッションでは、価値観や立場の違いを超えて見えてくるものを共有する重要性を見て取れた。テクノロジーとともに、情熱をもって変革に取り組むことで、未来の萌芽が生まれることに期待したい。
- ささき・ゆたか
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NTTデータ 代表取締役社長。
1990年にNTTデータ通信(現在のNTTデータ)に入社。
執行役員ビジネスソリューション事業本部長、同製造ITイノベーション事業本部長 、常務執行役員コーポレート統括本部長などを経て、2023年よりNTTデータグループの代表取締役副社長執行役員兼NTTデータの代表取締役社長に就任。
- なかむら・たか
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taliki代表取締役CEO、talikiファンド代表パートナー。
1995年生まれ。京都大学在学中に国際協力団体の代表としてカンボジアで2校の学校建設を行う。
大学4年時にtalikiを設立。関西を中心に250以上の社会起業家のインキュベーションや上場企業の事業開発・オープンイノベーション推進を行う。
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