AIを用いて日本語の意味を理解するFAQシステム
文章の意味を解釈することで検索ヒット率が向上
中小金融機関の本部には、営業店の担当者や事務担当者からのさまざまな問い合わせが寄せられています。しかし、問い合わせ担当の専門スタッフがいるものではなく、通常業務を行いながらの対応となるため、本部スタッフの本来業務に支障をきたしていることも少なくはないです。
また、業務が多様化・細分化し限られたスタッフしか対応できない案件も増え、そのスタッフが不在で営業店側の業務が停止してしまうケースなどもみられます。
そこで、AIを用いたFAQシステムで問い合わせ対応の負担を削減することを検討・開発し、2019年5月より「CONTIMIXE® AI(FAQ)」を提供開始しました。
NTTグループのAI関連技術「corevo®」を活用することで、質問文の意味を解釈し、同じ単語が入っていなくても単語や文章の類似度を比較し適切な回答を検索してくる仕組みとなっています。(図1)
意味合いを理解することで検索の精度があがり、一般的なキーワード検索と比較すると最大60%以上正答率が高くなることも確認されています。
また、お客様に検索履歴を記録し、追加すべき質問や回答内容を月に一度フィードバックしていただくことで、回答精度の向上をはかっています。「月に一度のフィードバックを負担と感じるお客様もいらっしゃるのは事実です。しかし、回答精度を高めていくにはAIに学習をさせ続けることが欠かせません。メンテナンスを行う手間をかけることで、結果的に効率化につながることをご理解いただけるよう努めています。」(禹氏)
お客様のニーズに応じた導入が可能
ASP型のサービスのため個別サーバーの構築などは不要で、質問文と回答文がセットになったQAデータがあれば迅速な導入が可能です。QAデータが十分に蓄積されていない場合や、よりヒット率が高まるQAデータの作成が必要な場合には、オプションとしてQAデータ作成支援も行っています。
また、いきなりすべての質問に対応するシステムとするのではなく、分野を絞ってスタートし、対象を拡大していくなど、お客様の状況にあわせた提案を行っています。
POC失敗の経験から使いやすさを徹底追及
月に200件ほどの問い合わせがあったファーストユーザーのお客様では、このシステムで月1500件の検索が行われるようになりました。ひとつの質問に対して何度か検索が行われていることを考慮しても、潜在的な問い合わせの掘り起こしにもつながっているといえます。
このようにご利用いただけるシステムとなるまでには、一度開発してPOCを実施したFAQシステムがほとんど利用されなかった、という経験があります。
日本語の意味を理解する検索システムでありながら、実際の検索は単語のみで行われることがほとんどで、期待される回答が得られないことで利用もされなくなってしまったのです。営業スタッフが出先でFAQシステムにアクセスする際に用いるのはタブレット端末で、文章を入力するのが難しい・面倒くさいということが要因でした。
そこで、UXUI(ユーザーエクスペリエンス、ユーザーインタフェイス)を徹底的に追求することにしました。NTTデータ社内のアジャイルプロフェッショナルセンター(APC)、業務知識や技術ノウハウを持つ他部門の協力を得て、利用者の業務フローを分析して仮説の構築・検証を行い、デザイナーに依頼してプロトタイプ画面を作成するなど、使いやすい画面・機能を極めていきました。
最終的に、文章や単語を自ら入力することなく、カテゴリーを選択すると表示されるキーワードを選んでいけば、それに該当する回答が返される、というものとなりました。これであれば、営業スタッフが客先で利用しすぐに回答を得られることができます。また、営業店などPCで使うことも想定し、文章での入力も可能にしています。「一度失敗を経験したので、使いやすさには徹底的にこだわりました。その結果として誰にとっても使いやすいものとなり、多くのお客様にご利用いただけているのだと自負しています。」(榎本氏)
非対面チャネルの機能強化への応用を目指す
CONTIMIXE AI(FAQ)で問い合わせ対応の効率化は実現できるが、目的としているのは、単なる効率化ではなく金融機関の収益向上につながる攻めの展開です。
例えば、金融機関ではSNSなどを利用した非対面チャネルの検討が進んでいるが、その機能のひとつとして、顧客からの問い合わせをCONTIMIXE AI(FAQ)に連携させ、自動で回答させる取り組みも行っています。システムでは解決できない場合にはコールセンターに接続し有人対応に切り替え、その対応時の音声データを記録してQAデータの作成に活用する検証も進めています。
さらに、蓄積したデータを活用したり他のシステムとの連携をすすめることで、金融機関が個々の顧客に寄り添ったアシスタントサービスを提供したり、OneToOneマーケティングサービスを展開していくサポートをしていきたいと考えています。