EV専用充電ステーションの充電管理システムで、クリーンな未来を創る
オーストリアでは、充電ステーションが多数のネットワークにより運用されている。これまでは、運営事業者による規格の違い、独自の利用・課金システムが存在しており、これがEV普及に不可欠な充電ステーション設置を妨げ、またユーザーが混乱し、使いにくい要因となっていた。NTTデータが開発したOCC(Open Charging Station Controller)は、これら数多くあるシステムを連携・統合し、ユーザーの利便性を高める充電管理システムの基盤ソリューションだ。このプラットフォームでEVへの充電手順を統一化することにより、ユーザーはあたかもATMで現金を引き出す感覚で、充電ステーションを利用できるようになる。
OCCの特長は、ユーザー認証にSMS、QRコード、非接触ICカードなどを利用し簡便にすること、また課金システムを統合することで、各銀行や国境を超えバリアフリーな運用が可能となることだ。さらにスマートフォンのモバイルアプリによる充電管理(開始・完了)、近隣充電ステーションの地図検索、利用可能なコネクタタイプの表示など、ユーザーに必要な情報をシンプルに提供し、コントロールも簡単に行えるようになる。充電ステーションプロバイダーには、電力供給の制御や顧客管理、機器監視、会計などのオペレーション簡略化と導入コスト低減のメリットをもたらし、電力会社には、配電や電力価格の調整管理の仕組みなどを提供。OCCは今後想定されるあらゆる要件やニーズにも柔軟に対応でき、安全かつ低コストで充電ステーションの設置を可能にする基盤ソリューションだ。
ケーススタディ
導入の背景と課題
2015年、ウィーン広域圏に400カ所のEV専用充電ステーションを設置
EVの普及や公共交通機関への負担緩和を推奨するオーストリア連邦政府生活省は、2020年までにオーストリア全車両の4.5%(およそ20万台)をEVに替える目標を掲げている。しかし、EVの潜在購入者が持つ不安要素の一つ、バッテリー切れによる道路脇での立ち往生の恐れが、普及を阻む最大の問題点であった。さらに、現在登録されているEVの台数が少ないため、高額な急速充電ステーションの建設や運営は、経済的観点から効率的ではないことがインフラ整備の妨げとなっていた。
この度、ウィーン広域圏を最新のイニシアチブモデル地区とし、2015年末までにEV充電ステーションを新たに400カ所設置する計画が策定された。NTTデータは、グループとして早い段階からe-モビリティの分野に取り組み、電力会社や充電ハードウェアメーカーと協力し、多種にわたる研究開発により先進的な基盤を作り上げてきた。この計画では電力サプライヤーであるWien Energie社と協力し、同社の既存プロバイダー以外にもWien Energie社の電力を供給するシステムを構築。充電ステーション設置において、よりフレキシブルな選択肢を可能した。
Wien Energie社のJürgen Halasz氏は次のように述べている。「我々は積極的にクリーンエネルギーを推進しています。ウィーン市民もクリーンエネルギーに対する関心が高く、EVに供給される電力がクリーンエネルギーであることを喜ばしく思っています。OCCの取り組みは、ヨーロッパでも先進的であり、長年パートナーとして信頼関係にあるNTTデータのイノベーティブで新しいアプリケーションがあったからこそできたソリューションです。現在、課題である設置コスト解決に向け、パートナー各社と連携したファイナンス設立を検討するなど、OCCの拡大に貢献していきたいと考えています。」
OCCは、充電ステーションの普及と、クリーンエネルギーを利用した次世代モビリティのビジョンに道筋を付ける重要な役割を担っている。
導入効果と今後の展望
インテリジェントにコントロールする充電管理システムで、クリーンエネルギーの高効率利用と普及に貢献
この充電管理システムにより、電力プロバイダーに関係なく、充電ステーションの設置が可能となった。2013年、OCCはドイツ国内の車両メーカーや大手電力会社など6社による合弁会社「ハブジェクト(Hubject)GmbH」に正式認定された。このシステムをベースとし、国内外を問わず、充電が行えて、課金・決済も一元処理できる「インターチャージeローミング」が追加されたことで、シンプルでユーザーフレンドリーな充電ステーションの安価な構築も可能となった。このOCCにより、クリーンエネルギーの効率的な利用、充電ステーション設置時のコスト削減、運用管理の簡略化が現実となった。
また、容易にネットワーク化できる充電インフラのため、欧州のみならず、世界各地の電力供給の実状に合わせたソリューションの提供が可能だ。NTTデータは、先進的なソリューションのリーディングカンパニーとして、より環境にやさしい社会インフラの仕組みづくりに貢献していく。