AIアドバイザリーボード2023年度総会
AIアドバイザリーボード、3年目に突入
2021年4月、NTTデータのAIガバナンス強化に向けた意見交換を行うことを目的に、「AIアドバイザリーボード」を設立しました(※1)。AIアドバイザリーボードは、社会デザイン・ソフトウェア工学/法務・倫理/リスクマネジメント・SDGsなどさまざまな分野の社外有識者から構成されています。2023年6月、社内外の委員の意見交換の場である総会にて今年度の活動継続が決定し、3年目に突入することとなりました。
2023年度は、社外委員に法務分野から九州大学の西村 友海先生、経営倫理分野から(株)梅津総合研究所の梅津 光弘先生に参画いただき、法情報学および経営倫理の有識者が新たに加わりました。また社内委員として、グローバルガバナンス本部より豊田 麻子本部長が参画し、さらに当社のグローバルガバナンス部門との連携が強化される委員構成となりました。
FY2022の活動振返りとFY2023の活動方針
FY2022の活動状況として、開催した4回の勉強会(※3~6)では、生成AI活用時の懸念事項や企業に求められる倫理的な視点といった様々な示唆を委員から頂いたこと、またそれらを社内でのAIリスクマネジメントの考え方やガイドラインに反映してきた旨が報告されました。
FY2023の活動方針に関する協議では、冒頭に豊田グローバルガバナンス本部長より、全社のAIビジネス方針として、「積極的なAI活用の推進」と「AIガバナンスの徹底」の両輪で取組み、ビジネス全体での統制を行うための新たなルール策定を進めている旨の説明がありました。
AIガバナンス室からは、当社がマネジメントすべき2つの事業リスクは「EUのAI規制法の制裁金リスク」と「レピュテーションリスク」であること、関連組織との連携によるリスク検知、評価、対処のリスクマネジメントプロセスの整備状況を説明しました。また、新技術である生成AIについて、社内に対して活用に向けた注意喚起とガイドラインの作成に着手している状況を報告しました。
社外委員の先生方からは、AIガバナンスの取組みを早期から開始し継続して活動していること、当社の活動が着実に前進していることを評価頂きました。
ディスカッション模様
2023年7月にNTTデータ社の大きな体制変更が予定されている中(※7)、「グローバルAIガバナンスのあるべき姿」をテーマに、「(A)急激な技術革新に対する統制の在り方」「(B)規制レベルが各国で異なる中での統制の在り方」の2つの観点から社外委員の先生方と社内委員が意見を交換しました。
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(A)
急激な技術革新に対する統制の在り方について
- 国立情報学研究所 石川 冬樹先生からは、「昨今では新技術に素早く対応しないこと自体が『この会社には任せられないじゃないか』というレピュテーションに繋ってしまう。そしてガバナンスは技術に深く踏み込んで最新情報を知っていないとできなくなっているため、ビジネスとガバナンスがうまく連携できるとよい」というご意見をいただきました。
- 西村先生からは、「ビジネスとガバナンスの両輪という考え方もあるが、倫理はガバナンス、積極活用はビジネスと分けすぎず、ガバナンスとビジネスの両面から倫理と積極活用の問題を共に考えることが重要」というご意見をいただきました。
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(B)
規制レベルが異なる中での統制の在り方について
- 梅津先生からは、「一番弱い立場のステークホルダーをアイデンティファイし、その人たちの権益を最大化する考え方(正義論)を指標的に取り入れること、手続き的正義の仕組みを取り入れると、社会に対して説得力を持たせられる。また全世界統一のポリシーではなく、各国の法整備に対して地域ごとに仕様変更すると実用的になる」というご意見をいただきました。
さらに放送大学 奈良 由美子先生からは、(A)(B)に共通して、「NTTデータのAIガバナンスの取組みについては積極的にアピールをしていく攻めのレピュテーションマネジメントを行うことが重要であり、とりわけユーザなどから期待と不安が大きな生成AIについては、リスク管理を行っていることを理解いただけるようなリスクコミュニケーションをしていただきたい。これはNTTデータに対する信頼を高めることに繋がる」というご意見をいただきました。
最後に
座長の東京大学 森川 博之先生からは、「AIガバナンスの取組みを社外にもアピールし、NTTデータがこの分野をリードしていってほしい」との激励をいただきました。
NTTデータ 藤原副社長(2023/6/9当時)は、AIアドバイザリーボード設立以来、専門的観点からご意見を頂いている社外委員の先生方へ感謝の意を伝えるとともに、生成AIという新技術がAIガバナンスの必要性を一気に加速したこともあり、今回の総会では具体性のあるディスカッションができたと振返り、今後も議論を続けていきたいとの想いを述べました。
今回の総会を通じて、NTTデータのAIガバナンスは、全社方針である「積極的なAI活用の推進」のために、AIによるビジネスリスクを最小化する仕組みを社内に浸透させることが重要だと再認識しました。また、手続き的正義の仕組みを取り入れること、各国の法整備状況にあわせることで実用的なポリシーとなるといった、この取組みをグローバル企業として拡大するにあたっての重要な示唆を頂きました。先生方から頂いたご意見は、今後の活動でも適宜取り入れ、AIガバナンスに関わる取り組みを推進していきます。
リンク
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(※1)
NTTデータニュースリリース「AIアドバイザリーボードの設置について」
https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2021/041901/ -
(※2)
AIのリスクマネジメント強化を目的とした「AIガバナンス室」の新設
https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2023/032301/ -
(※3)
FY2022第1回勉強会レポート:信頼されるAIの条件とAI品質アセスメントの実践
https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2022/0719/ -
(※4)
FY2022第2回勉強会レポート:AIの「倫理・社会受容性」のリスクマネジメント
https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2022/1116/ -
(※5)
FY2022第3回勉強会レポート:AIガバナンス ー企業における倫理とマネジメント
https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2023/0127/ -
(※6)
FY2022 第4回勉強会レポート:生成系AIの最新動向と法的懸念点
https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2023/0421/ -
(※7)
持株会社体制への移行及び国内事業会社の設立について
https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2023/051207/