大阪取引所は市場参加者(証券会社)ならびにその先にいる投資家のさらなる利便性向上、グローバルの主要取引所に対する競争力を強化する観点から、NTTデータによるシステムインテグレーションのもと、NASDAQ OMX社の「CLICK」を基盤ソフトウエアに採用し、世界最高水準のパフォーマンスを発揮するデリバティブ売買システムを構築した。2011年2月から運用している「J-GATE」がそれである。東京証券取引所との間のデリバティブ市場統合を経て、売買高で世界14位のデリバティブ市場の専門取引所としてのポジションを獲得。新商品のさらなる拡充と新分野への拡大にチャレンジし、"アジアで最も選ばれる取引所"を目指す。
お客様の課題
グローバルで競合する主要取引所と対抗できる、売買システムにおける世界最高水準のパフォーマンスを達成したい。
新規参入における障壁を取り除き、グローバル対応を推進する。
市場参加者(証券会社)に対して、売買システムへのデファクトスタンダードなアクセサビリティを提供したい。
導入効果
売買システムにおける注文処理時間(レイテンシー)を100ミリ秒から平均10ミリ秒へと大幅に短縮した。
海外主要市場で採用されている標準的制度・機能・取引形態を採用することで、グローバル対応を実現した。
API方式および国際的に使われているFIXによるインターフェースを提供し、売買システムへの接続負担を軽減した。
ケーススタディ
導入の背景と課題
パフォーマンス、グローバル化、アクセサビリティ3つの課題を解決すべくJ-GATEを構築
日本取引所(JPX)グループ傘下の大阪取引所(旧名称:大阪証券取引所)は、株式や投資信託の先物取引やオプション取引など、いわゆる「デリバティブ取引」を専門とする。2014年3月24日に、それまで旧・大阪証券取引所と東京証券取引所に分散していたデリバティブ市場が統合され、売買高で世界14位のデリバティブ市場専門取引所となったことに伴い、名称を現在の大阪取引所へと変更した。
ここまでに至る取り組みの中心に位置するのが、2011年2月に稼働を開始したデリバティブ売買システム「J-GATE」である。同システム構築の背景を、大阪取引所 IT部 システム開発グループ 課長(グループリーダー)の竹本 博一氏は、次のように振り返る。
「現在、取引市場ではアルゴリズム取引の拡大などによる注文処理時間(レイテンシー)の短縮が強く求められています。前世代のシステムの注文処理時間(レイテンシー)は世界の主流と比べて1桁以上遅く、この格差を埋めることが急務でした。また、大阪取引所がグローバルで競争力を向上していくためには、海外の主要市場において標準となっている制度・機能・取引形態を採用し、新規参入の障壁を取り除くとともに、市場参加者(証券会社)に対してデファクト・スタンダードなインターフェースを提供し、売買システムへの接続負担を軽減する必要がありました」
こうした「世界水準のパフォーマンス」「取引制度のグローバル化」「アクセサビリティの向上」の3つの課題の解決を、J-GATEで目指したのである。
選定ポイント
世界の取引市場で使われている売買システム向けパッケージ「CLICK」を採用
大阪取引所がJ-GATE構築に向けた要件定義を開始したのは2009年1月のことだ。そこで、世界70カ所以上の主要な取引市場で使われているNASDAQ OMX社製の取引売買システム向けパッケージ「CLICK」を基盤ソフトウエアとし、NTTデータがシステムインテグレーターとして選定されたのである。
大阪取引所 IT部 システム開発グループ 課長の浅野 和弘氏は、その選定理由をこのように語る。「決め手となったのは、CLICKの卓越したパフォーマンスです。それまで当所が使っていた売買システムの平均レイテンシーは約100ミリ秒でした。これに対してCLICKを導入することで、世界標準の10ミリ秒以下にまでレイテンシーを短縮できるのです。また、従来は1秒あたり800件程度にとどまっていた取引件数(スループット)を、一気に10倍以上に高めることができるという点にも大きな期待を抱きました」
そして大阪取引所が高く評価したのが、NTTデータが有する経験とノウハウである。
「NTTデータは日本国内向けに、すでにCLICKを導入した実績を持っており、心強いパートナーになってくれると感じました」と竹本氏は話す。
導入の流れ
大阪取引所と海外ベンダー間の円滑なコミュニケーションをNTTデータがサポート
「大阪取引所とNASDAQ OMX社のサポート役として、NTTデータがノウハウを活かし的確なプロジェクトマネジメントを行うことで、CLICKをベースとしたJ-GATEの要件定義から設計、構築、テスト、運用に至る一連のプロセスが進んでいった。
「世界的な標準パッケージとはいえ、単純にCLICKを日本の取引市場に適用できるわけではありません。そもそも海外の取引市場と日本の取引市場では成り立ちからして違っており、骨格となっている制度や慣習が大きく異なるのです。たとえば立会外取引の扱い方など、大阪取引所としての要件や要望を伝えても、なかなかその意図を理解してもらえないことがあります。そうしたやりとりについてもNTTデータが的確にサポートしてくれ、スムーズかつ齟齬のないコミュニケーションが実現できました」と竹本氏は語る。
また、大阪取引所が特に長い期間を割いて実施してきたのが、各証券会社からJ-GATEへの接続に関するテストである。具体的な接続方式としては、API(Application Programming Interface)と世界中の金融機関が使用しているFIX(Financial Information eXchange)の2種類を用意したが、これにもさまざまな課題が顕在化した。そこでも大きな貢献を果たしたのがNTTデータである。
「NTTデータは発生した問題に対して、NASDAQ OMX社に先んじて解決策や回避策を提示するなど、実績に裏付けられたノウハウを提供し、予定どおりのスケジュールでプロジェクトの進捗を支えてくれました」と浅野氏は高く評価する。
導入効果と今後の展望
従前の取引システムとの比較で取引件数を2倍に拡大
2011年2月に運用を開始したJ-GATEは、2014年3月のデリバティブ市場統合を成功裏に完了し、2014年12月現在まで約4年間にわたり安定した稼働を続けている。
「この過程を通じて参加者数は順調に拡大し、CLICKをベースとした売買システムを運用している取引市場の中で、大阪取引所は世界最大規模となりました。また、CNX Nifty先物や超長期国債先物など商品ラインナップが拡充し、取引件数もJ-GATE完成以前と比べて2倍に急伸しており、ビジネス成長に大きく寄与しています」と竹本氏は語る。
こうした数々の成果によって大阪取引所は、世界的なデリバティブ専門誌FOW(発行元:ユーロマネー社)が主催する「AWARDS FOR ASIA 2014(アジア大賞2014)」において、最も活躍をした取引所に贈られる「EXCHANGE OF THE YEAR」を受賞することとなった。
ただし、世界の取引市場はさらに先に進もうとしている。たとえばNASDAQ OMX社が提供している最新パッケージ「Genium INET trading」は、100マイクロ秒という超低レイテンシーを実現しており、世界の主流になりつつある。
「大阪取引所としても、2016年にGenium INET tradingを採用した新たな売買システムを導入する予定で、時代の潮流に追随していきます」と浅野氏は語る。
そして、名実ともに世界のトップ集団と伍する総合取引所に成長すべく、竹本氏は「JPX日経インデックス400先物取引をはじめとする新商品の拡充、新たな分野への拡大など、これまで以上に積極的に取り組んでいきます」と語る。
既存の市場参加者、さらには未来の市場参加者にとって、より魅力のある付加価値を提供することで、"アジアで最も選ばれる取引所"になることを目指している。
お客様プロフィール
- お客様名
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株式会社大阪取引所
- 英語表記
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Osaka Exchange, Inc.
- 本社所在地
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大阪府大阪市中央区北浜1-8-16
- 発足
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- 1949年4月 大阪証券取引所 設立
- 2013年1月 株式会社日本取引所グループ発足
- 2014年3月 株式会社大阪取引所に商号変更
- 資本金
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47億2,300万円(2013年1月1日現在)
- 従業員数
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125名(2013年7月16日現在)
- 主な事業内容
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市場デリバティブ取引に必要な取引所金融商品市場の開設を目的とし、取引の管理に関する業務、取引参加者の管理に関する業務、その他新商品・新制度の導入・調査研究等を行う。
- ウェブサイト
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