PARCOブランドのショッピングセンター事業を展開するパルコは、新たな接客チャネルとして位置付けているスマートフォンアプリ「POCKET PARCO」等のWebサービスを通じた接客を補完し、さらなる集客を促すべく、全国のPARCO店舗の館内全域をカバーするフリーWi-Fi環境の展開に乗り出した。その基盤として導入したのが、NTTデータの「無線LANおまかせサービス™」である。アクセスポイント1台からレンタルでき、大規模なインフラを所有することなく運営に専念できるメリットを活かすことで初期コストを抑え、1年間でサービスの全国展開を完了。その先に見据えているのは、パルコ独自のオムニチャネルの実現だ。
お客様の課題
- スマートフォンアプリ「POCKET PARCO」を補完する接客チャネルの強化
- 国内のみならずインバウンドを含めた集客の拡大
- 接客サービス向上に貢献するためのテナントの業務効率化
導入効果
- データ通信量を気にせずネットが使える"居心地の良い場所"となることで、顧客とのコミュニケーション機会を拡大
- POCKET PARCOの会員拡大と相まって、PARCOの店舗集客率が増加
- テナントに対してWi-Fi環境を利用したグループウェアを提供し、業務連絡や情報共有、オペレーションの効率を改善
ケーススタディ
導入の背景と課題
Webサービスを通じた接客を補完するフリーWi-Fi環境を館内全域に提供
全国でショッピングセンター事業を展開するパルコ。約3,000店舗のテナントと出店契約を交わし、互いの価値観を共有しながら共に成長・発展していく"イコールパートナー主義"のもと、人々が集い楽しめる商業空間づくりを実践している。
そうした中、モバイルネットワークを利用した新たな接客チャネルとして注力しているのが、スマートフォンアプリの「POCKET PARCO」である。各テナントからワンツーワンのおすすめ商品情報がタイムリーに届けられ、ユーザーは気になった商品を店舗で取り置きしたり、スマートフォンから購入したりできるというものだ。また、ショップからのおすすめ情報の「クリップ(お気に入り登録)」や、PARCO各店舗へ来店した際に「チェックイン」したりアプリに登録したクレジットカードを使ってパルコで買い物を行うと、自動的に「コイン(ポイント)」が貯まり、クーポンなどの特典が届けられる。
そして2014年、パルコはこの接客チャネルをさらに強化すべく、館内全域をカバーするフリーWi-Fi環境の導入検討を開始した。同社のWEB/マーケティング部の執行役を務める林直孝氏は、その狙いを次のように語る。
「フリーWi-Fiにより、お客様は館内の店舗情報に限らず、街歩き(ショッピング)に関するさまざまな情報を、データ通信量を気にせずに閲覧できます。こうしてPARCOが"居心地の良い場所"になることで、お客様とのコミュニケーション機会を広げることができます。このフリーWi-FiをPOCKET PARCOの会員はもちろん、インバウンド(訪日外国人観光客)のお客様にも提供して集客を促したいと考えました。また、各テナントにはWi-Fi環境でパルコとテナント間で利用しているグループウェアも使っていただけるようにすることで、業務連絡や情報共有、オペレーション効率を改善し、接客サービスのさらなる向上に貢献することを目指しています」
選定ポイント
最小限の初期コストでの導入と運用 レンタル型のクラウドサービスに注目
福岡PARCOに先行してフリーWi-Fi環境を導入。「確実に集客率アップにつながる」という手応えをつかんだパルコは、2015年を迎え、いよいよサービスの全店舗展開に向けた取り組みを開始した。
とはいえ、そのインフラを自前で構築・運用するとなれば、巨額のコストがかかってしまうのが悩みどころだった。そうした中でNTTデータからの提案を受け、導入を決定したのが、「無線LANおまかせサービス」である。同サービスは、FISCガイドラインに基づいたセキュアで信頼性の高い法人向けWi-Fi環境を、大規模なサーバーファームや監視体制を独自に所有することなく、運用に徹することができるクラウドサービスだ。
「アクセスポイントについても1台からレンタルできると聞き、これならば店舗の規模に応じた柔軟な設計が可能となり、初期コストを最小限に抑えた全店舗展開が可能になると判断しました。また、POCKET PARCOにおいてすでに利用している、提携クレジットカード決済やコインの付与、クーポン情報配信などの基盤である『CAFIS Presh®』と連携し、NTTデータのデータセンター内で多様なマーケティング情報を連動させられることも大きな決め手となりました」と林氏は語る。
導入の流れ
わずか1カ月のスケジュールで先行2店舗への導入を完了
もっとも、フリーWi-Fi環境の全店舗展開は、当初から苦労の連続だった。2015年1月中旬にキックオフし、まずは渋谷PARCOと札幌PARCOの2つの店舗から導入を開始したが、稼働開始までに与えられた時間的な猶予は、2月中旬までの実質1カ月しかなかったのである。
「なぜ渋谷PARCOと札幌PARCOを最初のターゲットに選んだかというと、インバウンドのお客様から高い人気を集めている店舗だからです。特に多くのお客様が集中して訪れる春節(旧暦の正月)時期にサービスを間に合わせたいという思いがあり、NTTデータの皆様には無理なスケジュールをお願いすることになってしまいました」と林氏は振り返る。
一方で林氏は、この過程での"かんかんがくがくの議論"があったからこそ、両者の信頼関係を築くことができたとも語る。
「百貨店のような開放的な売り場と違い、パルコではテナント間の境界がはっきりしており、ショップごとの個性を活かした内装を認めているため、Wi-Fi環境としての観点からは遮蔽物が多いのです。そうした中で、アクセスポイントをいかに効率的に配置し、コストを抑えながらデッドスポットをなくしていくか――。お互いが遠慮せず本音をぶつけあわないと、解決策を導き出すことはできませんでした」
さらに、同社のWEB/マーケティング部の伊藤健氏が、このように言葉を続ける。
「運用フェーズに入ってからも、さまざまな課題に直面します。NTTデータの皆様とは密に連携させていただき、ひとつずつ課題を解決していきました。」
導入効果と今後の展望
来店客の動線分析にチャレンジし独自のオムニチャネル実現を目指す
それから1年後の2016年2月、パルコは全国のPARCO店舗へのフリーWi-Fi環境の展開を完了した。
すでにパルコでは次のステップに向けた取り組みを開始した。新たなテーマは、来店客のパーミッション(許諾)を受けた上で館内での位置情報を把握する、動線分析へのチャレンジだ。
「お客様が来店中にどのフロアに移動し、どのエリアにとどまっていたのかといった情報とともに、クレジットカードの購買履歴、POCKET PARCOのアンケート機能を通じて寄せられた満足度評価やコメントなどの情報との相関関係を分析します。この結果を各テナントに統計情報としてフィードバックすることで、 新たな"気づき"を与え、サービス改善につなげていければと考えています」と林氏は語る。
さらに、その先に見据えているのが、"24時間パルコ"というコンセプトを前面に掲げた独自のオムニチャネルの実現である。林氏は「パルコとテナント間の連携をさらに強化し、たとえば熊本PARCOで取り扱っていないブランドの商品を池袋PARCOから直接買えるようにするなど、店舗のスペースや営業時間、地理的な制約などを払拭するイノベーションを実現し、これまでにないショッピングの体験価値をお客様に発信していきます」と意気込みを示すとともに、パルコのイノベーションをともに実現する、NTTデータのサポートに期待を寄せている。
お客様プロフィール
- お客様名
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株式会社パルコ
- 所在地
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〒150-0045 東京都渋谷区神泉町8-16 渋谷ファーストプレイス
- 設立
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1953年2月13日
- 事業概要
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商業施設の開発・運営を行うショッピングセンター事業を中心に、空間創造やビル管理を行う総合空間事業、高感度なセレクトショップを運営する専門店事業、話題性の高い情報発信と付加価値の創造を行うエンタテインメント事業、全国の商業施設および専門店へ向けたWebコンサルティングと求人支援を行うWebコンサルティング事業を展開
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